3月29日に始まる世界フィギュアスケート選手権2017。女子シングルの世界ランキング1位であるメドベージェワ選手に優勝の呼び声が高いが、彼女の演技はテクニックだけでなく、その表現力にも定評のあるところが強みだ。
「メドベージェワというと、加点のつく片手を上げて飛ぶジャンプなど、テクニックに注目されることが多いのですが、FSで彼女の演じる物語的な表現も心に響きます。今季のFSプログラムはアメリカの9.11に捧げられた映画『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の音楽で『愛する人を見送り、電話が鳴り、その死の知らせを受けるシーン』。彼女の演技は4分間の映画のようで、笑顔から悲しみまで表情の表現がすごいと解説者の鈴木明子氏も絶賛しています。この演目にはメドベージェワのコーチであるトゥトベリーゼの思いが強くメッセージに込められているのです。コーチはアメリカで暮らしていた時に遭遇した、9.11よりも前に起こったテロの被害をイメージしていると言います。彼女はロシアのテレビで『自分が叫びたいと思っていることを、彼女たちに表現させている』と語っていて、昨シーズンのメドベージェワのFSでは、『聞こえる、聞こえない』というテーマで手話のような仕草がありましたが、聴覚障害のある自身の娘をイメージして作ったもので、メドベージェワ自身も一緒に練習をしている娘をイメージしながら、情感あふれる演技で表現して見せました。そんなメッセージ性の強い演目に思いを込めて指導するからこそ、メドベージェワの演目や表現に迫力が増し、見る人の心に響く演技ができるのでしょう」(スポーツライター)
世界選手権は、日本人選手の活躍はもちろんだが、メドベージェワの情感あふれる演技にも期待だ。
(芝公子)