「2人の顔って似てるわね」「話し方や仕草が本当に同じ……」
仲のいい男女のカップルと接して、このように思うことはありませんか? きっと、そう感じたことはあるのではないでしょうか。そして、こういうカップルが多いことは、実はとても自然なことだと考えられるのです。
それは、心理学者のEハーシャイドらが提唱した【マッチング仮説】で説明がつきます。釣り合い仮説とも呼ばれるこの仮説は、「人は自分と同じような身体的魅力の相手と付き合うものである」という考え方です。
もちろん人間は、自分よりずっと身体的に魅力的な人に好意を持つこともあります。気持ちがドキッとしたり、「あんな人と付き合えたらいいなあ……」と想像したりはしますよね。しかし、「相手は自分よりずっと格上」と感じてしまうと、現実的に付き合う相手としては考えられず、声をかけたりかけられる前から諦めてしまいがちです。“高嶺の花”という言葉がありますよね。あの人はステキだけれど自分とは釣り合わない……だから自分に合うそこそこの相手との恋愛関係に落ち着くのです。
それとは逆に、自分の外見に自信がある場合には、付き合う相手にも同等の身体的魅力を望みます。「自分はこれだけの外見なのだから、見劣りするような外見の人とは付き合いたくない」という気持ちがあるからです。
こうして結果的には「自分と釣り合うのはこの相手」と、無意識のうちに感じた相手と付き合うところに落ち着くわけです。それがマッチング仮説という考え方です。この仮説については多くの実験結果があり、見た目だけではなく、価値観も同じようなカップルが多いそうです。
ただ、ときどき男女の見た目が不釣り合いのカップルがいますよね。片方が抜群の外見で、もう片方がそうではないという場合です。こんなときは、そうではない人のほうが、「自分には他に大きな魅力がある」と考えている場合が多いです。例えばそれは学歴や経済力などです。外見以外の何かを自分は持っている……その自信から、高いレベルの外見の持ち主とも対等の気持ちで付き合えるのです。
人の気持ちって面白いですね。みんな、自分がかわいい。ですから、周囲の目を気にしながらも、社会の中で「ある程度の位置付け」に自分を置いておきたい……そんな心理が恋愛の場合にも働いているようです。
(恋愛カウンセラー・安藤房子)