人は、自分のことをたくさん話してくれる人、いわゆる【自己開示】をしてくれる人を好きになりがちです。それはなぜなのでしょうか。このことについては、社会心理学者アーウィン・アルトマンとダルマス・テイラーが研究した【社会的浸透理論】が有名です。
アルトマンたちは、最初は表面的な自己開示が、ある時期になるとより深い相互的な自己開示に変化していくと考えました。最初は自分のことを少ししか話さず、相手からも少ししか話を聞かない状態です。でも、最初の出会いがよい気持ちでいられる状態であった場合には、お互いの自己開示はより広い話題で内面的な内容に変化していき、さらに親密度が増していくというのです。
つまり、社会的浸透理論とは、「人は、自分の話をして相手の話を聞くうちに徐々に親しくなっていきますよ。親しくなるとますますお互いのことを広く深く話すようになりますよ」ということなのです。
では、どうしてそのような状態になるのか。それは、自分のことを話してくれる相手からは信頼されているように感じるからです。そして、信頼してくれる人のことを、自分も信頼しようと考えるようになるからです。こうして好かれた人を好きになることを【好意の返報性】といい、この返報性は自己開示と大きく結びついていると考えられます。
しかし、この自己開示、やり方や受け取り方を間違えると逆効果。例えば、自分の自慢ばかりでデータ過多の自己開示は、相手からうんざりされてしまいます。また、せっかく相手が自己開示してくれたのに、それをちゃんと受け止めて言葉で返してあげず、「そうですか……」などの一言で済ませてしまっては、もう相手はそれ以上話す気持ちがなくなってしまいます。
自己開示するほうもされるほうも、相手への思いやりを持ってコミュニケーションを取ることが、ポジティブな人間関係につながるといえそうです。ですから、上手に自己開示を利用して、ステキな恋愛につなげてくださいね。
(恋愛カウンセラー・安藤房子)