「付き合い始めた頃は、彼の言うことやること、なんでもポジティブに受け止められたんです。でも、前と同じことを言われたりされたりしても、だんだん嫌悪感だけが募るようになって……。いったいどうして、私の感情が変わってしまったのでしょうね」
ある程度の大人で恋愛体験のある人なら、誰もが体験したことのある“倦怠期”という感覚……。これはなぜ起きるのでしょうか?
一言でいえば「一緒にいるうちにだんだん相手に飽きてきて、相手の言動のすべてをポジティブに考えられなくなってきた」ということなのですが、その人間心理をちゃんと調べた人がいるんです。
社会心理学者のブラッドバリーらは、【帰属理論】をもとに、熱愛カップルと冷めたカップルの違いを分析しました。帰属理論とは、“私たちは人間の行動には原因と結果があるのだという考え方で理解をしようとしている”という考え方のことです。
検証の結果ブラッドバリーらは、熱愛中のカップルの場合は、恋愛相手の望ましくない言動を相手のせいではなく何らかの外的要因のせいであり、そしてそれは毎回ではなくて偶然起きた今回限りのことだろうと思うことが分かりました。
つまり、例えば彼に部屋のゴミ捨てをお願いしたとしますよね。それを彼ができなかった場合、女性は「何か事情があって、それはたまたまのこと。いつもはそうではない」という解釈をすることが分かったのです。いつもはもっとしてくれている、それに他のことも気付いて動いてくれているというように、何でもポジティブに解釈をするということです。
また、お願いしていないことを彼がしてくれたときには「彼は気がきくし、いつもやってくれるし、他のことでもこうだわ」と、すべてにおいてポジティブに考えていることが分かりました。
でも、これが冷めたカップルだとまったく逆でした。自分の望むことを彼がしてくれないときには「彼は私のことを気にかけていない」、お願いしたことは「いつも忘れがち」と考え、「彼は他のことでもこうだったわ」と考えるようでした。
また、自分がお願いしていないことを彼がしてくれたときには「きっと彼のお母さんが言ったことをしているのだわ」「こういうことはどうせ続かないし」「今回はしてくれたけれど、他のことでは気が付かないだろう」と、ネガティブにとらえていることが分かりました。
この検証結果からいえることは、相手を認めずに何でもネガティブにとらえていたら、やっぱり恋愛関係はうまくいかないということです。
……というか、こういうことをわざわざ調べなくても、おおよそ検討がつくことだと思いますけれどね。それをわざわざ調べるのが心理学者の面白いところ。きっと恋愛好きの心理学者だったのではないでしょうか。
(恋愛カウンセラー・安藤房子)