今すぐに妊娠を希望していなくても、将来に備えて対策をとっておく「プレコンセプションケア」を受ける女性たちが増えているのをご存知でしょうか。
エジンバラ大学で未成熟卵の培養法などを学んだ技術と自らの不妊体験を生かし、医療法人オーク会で不妊治療を行う医師の船曳美也子さんによると、プレコンセプションケアとは将来の妊娠に備えた身体づくりをしておこうというもの。「妊娠力」を高めるために、まずは自分自身の状態を知り、今後に備えることなんだとか。
プレコンセプションケアを受けに来るのは、30代女性が多いそうです。結婚前の人の他、今は予定がないけれどいずれは妊娠を希望して受診する人も多いそうです。「産婦人科医としては、特別な症状がなくても20歳か、遅くとも25歳過ぎたら婦人科の健診を勧めます」と船曳さん。プレコンセプションケアでは、自分の身体の状態を知るための検査を行いますが、具体的な検査内容を次のように話します。
「まずご自身の健康状態を確認します。悪性疾患や性感染症がないか、子宮がん検診、卵巣の超音波による検査、性感染症については採血や膣分泌物の検査を行います。また、卵巣予備力の検査として、AMH(抗ミューラー管ホルモン)を血液検査で測定します。AMHとは卵巣の中で眠っている卵子のうち、排卵に至る、起き出した卵子の入っている袋から出るホルモンのことで、AMHが高い=起き出した卵子数が多い=卵巣内に残っている卵子も多いだろうと考えます」
検査の結果に応じて治療することもあるようで、「子宮がんでも、前癌状態であれば、外来での凍結手術やレーザー切除で行える病院もあります。また、卵管閉塞の原因になりやすいクラミジア感染症もよくみかける疾患です。こちらは抗生剤を内服していただきます。ひどいときは腹痛や不正出血が出ますが、無症状のことも多いです。最近、増加傾向にあるのが梅毒です。絶対数は少ないのですが、10年前と比べると明らかに増加傾向にあります」とのこと。
その他、超音波で分かる治療を要するものとして、子宮内膜症や子宮腺筋症、子宮筋腫を挙げています。とくに、子宮内膜症は妊娠力を低下させる原因になるので、発見されれば低用量ピルや内膜症治療用薬を内服して治療します。ホルモン剤の入った避妊リングを使う方法もあるようです。
思わぬ疾患が早期に発見されれば、妊娠できる確率も上がります。将来、子どもを産みたいと考えている人は、プレコンセプションケアを今から始めるという選択肢も考えてみてはいかがでしょうか。