「誰かを撃ってやろうなんて気持ちにはなったことがない」
安倍晋三元首相への銃撃により、殺人容疑で送検された山上徹也容疑者について、タレント・武井壮はそのように語った。
7月8日、世界中を震撼させた奈良市での凶弾事件だが、捜査を進める中で、山上容疑者がかねてより宗教団体「世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」への恨みを募らせ、SNSからも多くの不満や怒りを表現したツイートを投稿していたことがわかった。
安倍元首相と旧統一教会につながりがあるとの情報を得た山上容疑者は、参院選の最中、ついに許されざる蛮行を決行。現在、多くのワイドショーでは、同容疑者が犯行に至るまでの経緯が詳しく伝えられており、母親が旧統一教会に多額の献金をおこなったことで、家庭が崩壊してしまったこともわかっている。
これについて、7月19日放送の「めざまし8」(フジテレビ系)で意見を求められた武井は「僕は学者でも何でもないので、彼の人生に同情すべき点も多々あるし、献金問題などで受けた彼の精神的な歪みというのも感じるから、例えば制度に問題はなかったのかなどを考えて、同情的な気持ちになることもありますが、僕は本当にわからない」とコメントした。
また、「僕も自分の親が投資で財産を失ってしまって、破産して、そこから自分で人生を立てようと思って小学校時代から努力し始めた。世の中で何か生きる術はないかというふうに探して、自分の人生を何とか守ってきた」と、自身も家庭が危機に陥った経験があったと語る武井。しかし、「失敗したからといって、原因となった人を撃ち殺してやろうなんて気持ちになったことがないから、正直、彼の起こした行動は全く理解できない」と述べ、「シンプルな殺人事件としか僕には思えなくて。事件の裏にある理由を“仕方ない”と受け止めることは僕にはできない」と、やはり銃撃の罪深さについて言及した。
「もともとは美容室を3店舗経営する裕福な家庭に育った武井ですが、事業が傾き、多額の借金の末に両親が離婚。父親に引き取られるも、その後家を出てしまい、小学生にして兄との2人暮らしを強いられる過酷な境遇を生き抜いてきました。当然ながら金銭面でも苦しい生活になるも、近所の家やお店のゴミ出しを代行する契約を締結してもらうよう交渉し、小学生ながら月に7万5000円を稼いでいたといいます。
逆境を跳ね除けるように努力を重ねてきた武井からすると、家庭崩壊の原因と関連がある人物を銃撃してしまえという発想を理解できないのも納得ですが、ネット上では『確かに事件を正当化できませんが、容疑者の言葉にも耳を傾ける必要はあると思います』『武井さんはたまたま心が強かったのでしょうが、世の中からこういった蛮行を減らすためには、環境自体の見直しが必要』『努力で上手くいった人には“よかったね”と言ってあげたいが、上手くいってない人を“努力が足りない”と安直にジャッジできない』などのコメントが書き込まれ、社会的弱者の叫びに耳を傾けるべきだとする人も多かったです」(テレビ誌ライター)
人を殺めてしまったことは取り返しのつかない大罪であることは間違いないが、世の中には、武井が理解できないほどの壮絶な人生に苦しめられ、また、それを乗り越えられる人ばかりではないという現実が確かに存在するということだろう。
(木村慎吾)