実在の人物をモデルにしていても、ドラマはやはりドラマだったようだ。
4月4日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第2回では、主人公の槙野万太郎(森優理斗)が神社にて天狗に出会う場面があった。その正体に疑問の声が飛んでいるという。
母親と口喧嘩して家を飛び出した万太郎は神社に向かい、自分の身体が弱いことを「神さんのせいじゃに」と毒づき、「神さんのアホ!」と絶叫。すると樹の上から男(ディーン・フジオカ)が「神さんをアホウ呼ばわりするち、太え坊じゃのお」と現れ、天狗か武士かと驚く万太郎に「天狗じゃ!」と言い放ったのだった。
「刀を携える男の胸元には『組あい角に桔梗紋』の家紋が。これは物語の舞台である土佐を代表する幕末の志士・坂本龍馬の家紋です。第2回のクレジットでは『天狗』となっていますが、公式サイトではきっちり坂本龍馬と紹介。やはり土佐が舞台とあれば、制作側としても坂本龍馬を登場させたいのでしょう」(テレビ誌ライター)
作中の時代は1867年とのみ示されているが、第1回では造り酒屋の年中行事である「甑倒し」が描かれていた。これは3月ごろに行われるもので、おおよその時期が特定されている形だ。
一方で坂本龍馬が亡くなった近江屋事件は同年の11月に発生しており、第2話の時点ではまだ存命。主人公のモデルとなった植物学者の牧野富太郎博士と坂本龍馬のあいだに接点があったかどうかは不明ながら、時代考証的には1867年3月時点で二人が出会う可能性はあったと言えるのかもしれない。
だが、このエピソードがドラマとしての創作であることは明らかだという。なぜならこのタイミングで二人が出会うのは史実に反しているというのである。
「坂本龍馬は1867年9月に、1000挺あまりの新式小銃を積み込んだ船にて長崎から土佐に帰還。これが実に5年半ぶりの帰郷でした。当時の龍馬は討幕の志士として重要な役割を果たしており、単身でひそかに土佐に帰ることなどできない立場。それゆえ同年3月に万太郎に土佐で出会うことはありえなかったのです」(前出・テレビ誌ライター)
牧野博士をモデルにしつつも架空の人物である主人公の万太郎に対し、ディーン・フジオカ演じる坂本龍馬は歴史上の人物として実名で登場。それならば史実に忠実であってほしいという視聴者がいるのも無理のないところだろう。
もっともフジオカの登場シーンには<天狗がイケメンすぎる!><カッコよかった>といった絶賛の声が続出。どうやら朝ドラの世界においても「イケメンなら許せる」の法則が発動されていたようだ。