こんな「指定」は見たことないよ。そんな声があちこちから聞こえていたようだ。
4月13日放送のドラマ「あなたがしてくれなくても」(フジテレビ系)に、女性誌の副編集長役で田中みな実が登場。帰宅するも編集部からの呼び出しでとんぼ返りする姿が描かれていた。
田中が演じる楓は、建設会社で副部長を務める新名(岩田剛典)の妻。二人とも切れ者のようで、豪華マンションに暮らしている。だが楓があまりにも多忙だからなのか、二人はすっかり性活レスとなっているようだ。
「彼女の副編集長役はなかなかハマっていましたね。会社からの電話で呼び出された際には『広告部にも連絡しといて』と話していましたが、タイアップ記事の多い女性誌では編集部と広告部が連動しながらの誌面作りは普通のこと。しっかりと下調べしている様子が伝わっていました」(女性誌ライター)
彼女が手にしていた校正紙には、実在する女性誌「GINGER」の名前が。GINGERの公式サイトによると、本作には同編集部が全面協力しており、撮影に編集者が立ち会うこともあるという。第2回以降には編集部のセットも登場するそうだ。
そのセットはGINGER側が「再現性が高すぎて怖い…」と驚くほどの出来栄えだとか。出版業界関係者や女性誌の読者としても興味津々のところだが、そのわりには第1話の作中で、あまりに不自然な描写もあったという。
それは自宅ベッドで眠り込んでいる楓のそばに置かれていた色校だ。そこには赤ペンで「サイズアップ」「レタッチ」といった校正指示が入っていた。だが実際にはこんなアバウトな指示はあり得ないのである。
文字のサイズを大きくしたい場合には、具体的にどれくらい大きくするのかを指示する必要がある。画像のレタッチは編集部では日常茶飯事だが、どうレタッチしたいのかを説明しない指示などあり得ず、よもやGINGER編集部ではそんないい加減な指示が通用しているのだろうか?
「これらの赤字はおそらく、一般の視聴者にも分かりやすい言葉を使ったダミーでしょう。文字の場合、級数やフォントサイズを具体的に指定したり、もしくは文字の高さをミリ単位で指定するものですが、門外漢には分かりづらいもの。画像のレタッチに至ってはどう変えたいのかを事細かく説明する必要があり、それを具体的に書き込んだら校正紙が真っ赤になります。そんなリアルを追求するあまり、ドラマとして見づらくなってしまっては本末転倒ということなんでしょうね」(前出・女性誌ライター)
リアルと演出の差は女性誌に限らず、あらゆる場面に表れるもの。本作でも主人公のみち(奈緒)が働く建設会社や、夫・陽一(永山瑛太)が働く喫茶店のシーンを本職の視聴者が見たら「こんなのおかしいよ」と思う描写が続出しているに違いない。
見方を変えれば、田中の演じる女性誌副編集長や瑛太の喫茶店がリアルに見えるなら、演出が成功していることになる。いまのところ演出面はおおむね好評な「あなたがしてくれなくても」。あとは物語の求心力がどこまで高まるのかが問われるところだろう。