2013年前期のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」が再放送され、多くの朝ドラファンを惹きつけている。
10年前には放送終了と共に「あまちゃんロス」が発生し、年末のNHK紅白歌合戦では出演者が多数登場しての“あまちゃんコーナー”を展開。ヒロインの天野アキを演じた能年玲奈がその後、所属事務所とのトラブルで地上波に出演しなくなったこともあり、能年の活躍を存分に味わえるという意味でも貴重な作品となっている。
そんな話題作の「あまちゃん」が再放送されたことにより、この10年間で朝ドラの視聴スタイルに生じた大きな変化が浮き彫りになっているというのである。
「10年前には存在しなかったものとして真っ先に挙げたいのが『反省会タグ』です。2作前の『ちむどんどん』が世紀の問題作として酷評され、ツイッターのハッシュタグ『#ちむどんどん反省会』が昨年の新語・流行語大賞にノミネートされたのは記憶に新しいところ。その反省会タグは2016年ごろに出現したとされており、『あまちゃん』当時には存在していませんでした」(テレビ誌ライター)
昨年、「ちむどんどん」が世間をにぎわせていた時期には、一部のマスコミで「ちむどんどんを貶めようとするネット民が反省会タグを生み出した」という事実誤認まで報じられたもの。ともあれ「あまちゃん」の放送当時にもツイッターはすでに広まっていたが、作品の粗探しを楽しむといった視聴者は少なかったものだ。
それが最近では、作中での<考証不足>や<脚本のミス>を指摘する声が激増。ドラマゆえ創作要素が多かったり、現実に即していないような場面が描かれるのは当然のはずだが、そういった遊びの部分を許さない不寛容な視聴者が増えているのである。
再放送中の「あまちゃん」でも、これが現代の新作ドラマであれば間違いなく酷評されていたであろう場面が見受けられた。5月1日放送の第25回では、安部ちゃん(片桐はいり)が岩手物産展に向けて北三陸市を去る場面に、危険な描写があったという。
「北鉄に乗って袖が浜駅を出発した安部ちゃん。窓から手を出し、ホームを走るアキと別れの握手を交わす場面では、車掌の吉田(荒川良々)が『危ないですよ!』と声をかけていました。窓から身を乗り出して手を振る安部ちゃんに『頭引っ込めて! 危ねえって!』と注意する場面もありましたが、これが新作ドラマだったら視聴者から《危険行為だ!》《マネするヤツがいたらどうするんだ》といった批判が続出していたことは確実でしょう」(前出・テレビ誌ライター)
そういった演出にも「ドラマだから」という言い訳が通用しなくなった不寛容の時代を迎えている朝ドラ。10年前の「あまちゃん」が見せた牧歌的なシーンは、もはや戻ってこないのかもしれない。