まさか一度ならずも二度も伏線が回収されるとは! そう驚く視聴者も多かったようだ。
6月6日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第56回では、いよいよ海女カフェのオープンが近づき、6人の新人海女が加わることになった。昨年にはたった一人の新人だったアキ(能年玲奈)は今回、新人の教育係を務めることに。そこで口にした言葉がなんとも重みを感じさせたという。
訛りすぎる海女として人気を博すアキ。テレビ出演などで知名度も広がり、アキに憧れて海女になりたいという若い女子が続出していた。海女カフェのオープンを控え、新人たちに接客法などを教えるアキは「観光海女はサービス業、接客業です」と笑顔で伝えていた。
「アキが口にしていたのは、4月26日放送の第21回にて祖母の夏(宮本信子)から教えられた言葉そのもの。当時のアキは夏の話す意味をつかみかねている様子でしたが、そこから1年が経った今、海女として成長を遂げた彼女は、夏が伝えたかったことを体得できていたようです」(テレビ誌ライター)
前年の夏、見習い海女だったアキはファンが見守る中で初めてのウニを収穫するも、それは先輩の安部ちゃん(片桐はいり)が海の中でアキに手渡してくれたものだった。
そのことを後悔している様子のアキは「安部ちゃんに悪いべ」などと愚痴をこぼすも、海女クラブの会長でもある夏は「アキ、おめえなにか勘違いしてんじゃねえのか」と叱責。「観光海女は接客業、サービス業なんだど」と言い聞かせていたのである。
「このセリフは5日後の第26回でも繰り返されることに。アキが海女の格好で北鉄をアピールしたりテレビ出演することに母親の春子(小泉今日子)が『何か違うんじゃないか』と難色を示すなか、夏は『観光海女はサービス業だ。お客さんが喜んでくれればいい』と反論していたのです。この時に視聴者は、5回前のセリフが伏線回収されたと感じていましたが、よもやそこから一カ月以上も経ってから二度目の伏線回収があるとは。脚本の巧みさには驚かずにはいられません」(前出・テレビ誌ライター)
しかも今回の第56回では二年目海女のアキが、夏の言葉をそのまま自分の考えとして受け入れていた。すなわちアキ自身が海女として成長した姿を見せていたのである。
しかも「海女はサービス業」という考え方は、本作の今後にも大きな影響を及ぼすというのだ。
「本放送を観ていた視聴者なら『あまちゃん』が今後、アイドルを描く物語へと変容していくことを知っています。そのアイドルはいわば究極のサービス業。現時点でアキは、アイドル的な活動はお座敷列車でユイと組んだ即席ユニット『潮騒のメモリーズ』1回だけという認識ですが、サービス業の魅力を知った彼女は今後、ファンサービスへと軸足を移すことになります。すなわち海女とアイドルは地続きであることを、今回の伏線回収が示していたともいえるのです」(前出・テレビ誌ライター)
アキを演じる能年(現・のん)は女優として活躍しており、その女優業もやはりサービス業のひとつ。現在と未来、そして役と本人すらもリンクさせている「あまちゃん」の複雑さは、ますます視聴者を魅了してやまないようだ。