アイドルの才能を備えていたのは、むしろアキのほうだったのかもしれない。
6月8日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第58回では、水口(松田龍平)がついに正体を現すことに。彼の語った春子評に、耳を傾ける視聴者もいたようだ。
水口の正体はユイ(橋本愛)がニラんでいた通り、東京から来たスカウトマンだった。彼は大物プロデューサーの荒巻太一(古田新太)が47都道府県から地元アイドルを集めたユニット「GMT47」を結成する構想を持っていると説明。上野に劇場を作り、東日本からアイドルの卵を集めるために、ユイとアキ(能年玲奈)をスカウトしに来ていた。
「ユイはすでにアイドルになる方法を水口に相談しており、岩手のローカル番組に出演し始めたのも彼のアドバイスだと告白。一方で水口はアキに対して『本当は君も東京に連れていきたいんだけど、何か忙しそうだし、興味ないんじゃね』と突き放していました」(アイドル誌ライター)
ただ水口のこれまでの言動を振り返れば、この発言もおそらくは、アキを発奮させるための手口だろう。なにより彼はユイよりも、アキのほうにアイドルとしての才能を見出している様子なのである。
水口は北三陸に来た当初、バー梨明日にてアキの母親・春子(小泉今日子)が「潮騒のメモリー」を歌う姿を目撃。その時の印象をアキに対してこのように語っていた。
「驚きました。あんな場末のスナックで聴く歌じゃない。上手い下手じゃなくて、説得力というか本物感があった」
芸能関係者である水口を一瞬で虜にした春子の歌。そのDNAがアキにも受け継がれているのであれば、アキにも「本物感」の萌芽が備わっているのではないだろうか。
「それを象徴していたのが、アキが手にしていたスプーンだったのでしょう。前日、アキがスプーンを持ったまま洞窟に駆け付けた姿は《ウルトラマンの変身シーンみたい》だと話題になっていたもの。しかし実際のところ、このスプーンはアキが『銀の匙をくわえて生まれてきた』ことを意味していたように思えるのです」(前出・アイドル誌ライター)
アイドル志望のユイに対して、アキは今のところアイドルになるつもりはない。しかし実際にアイドルへの適性を備えているのは、春子の娘であるアキなのではないだろうか。
そのアキは「訛りすぎる海女」として人気となり、海女カフェのオープンでは中心的な役割を果たしていた。なにしろ開業資金の2000万円は、アキのファンだという銀行員が融資してくれたもの。彼女のアイドル性が周りを巻き込み、海女カフェという形に結実していたのである。
「アイドルの適性とは決して顔面偏差値や歌の上手さで決まるものではありません。アイドルとして大成する人はそもそも『アイドルとして生まれてきた』部分を備えているもの。その意味で水口はアキのほうにこそ、アイドルとしての可能性を見出しているように思えます」(前出・アイドル誌ライター)
アキが落としたスプーンを拾っていたユイだが、彼女は銀の匙をくわえてはいなかった。その残酷さもまた、芸能界が持つ真実の一つなのかもしれない。