6月23日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第60回では、造り酒屋の峰屋を長年支えてきた大奥様のタキ(松坂慶子)が、医者に対して弱音を吐く場面があった。ここでタキが口にしたセリフが、10年前の朝ドラ「あまちゃん」と同じだと、視聴者が驚いていたという。
タキは孫で主人公の万太郎(神木隆之介)と、同じく孫で女当主の綾(佐久間由衣)の二人が立派に成長していることに「思い起こすことらあない」と言いつつ、万太郎が結婚相手の寿恵子(浜辺美波)を連れてきたことから「万太郎の子供を、わしのひ孫を、この手に抱いてみたい」との願いを口にしていた。
そのため医者の鉄幹(綱島郷太郎)に、どんな薬を使ってもいいから自分を生かしてほしいと懇願。ところが鉄幹は、自分にはそんな薬を作れないとして「申し訳ありません」と頭を下げていた。
「その言葉に落胆しつつも、タキは『ああ…すっきりした』と晴れ晴れとした顔つきに。人には天から与えられた寿命があると納得していました。そのセリフが現在再放送中の『あまちゃん』にて、祖母の夏(宮本信子)が口にした『…すっとしたぁ』という言葉のオマージュだと、視聴者が驚いていたのです」(テレビ誌ライター)
10年前に放送された「あまちゃん」では、娘の春子(小泉今日子/有村架純)が高校生だったとき、岩手・北三陸の田舎から東京に家出していた。それはアイドルになりたいという夢を、夏が認めなかったからだ。
だが25年が経ち、孫のアキ(能年玲奈)が同じようにアイドルになりたいと言い出した時、反対する春子とは裏腹に夏はアキを応援することに。その件で春子が夏に詰め寄ると、夏は「許してけろ…」と頭を下げたのである。
自分の振る舞いを後悔し、娘の春子に頭を下げた夏。25年間、伝えられなかった思いをようやく口に出せたことで、「…すっとしたぁ」との思いに至っていた。一方でタキは、孫やひ孫のことを思いつつ、もっと長く生きたいというわがままが否定されたことで「ああ…すっきりした」との諦念を口を突くことに。いずれにせよ子や孫に対する強い思いから出たという点では、同じような言葉なのかもしれない。
「おそらく『らんまん』の制作陣は、『あまちゃん』でも同じようなタイミングで祖母が自分の人生を振り返っていることに気づき、あえてセリフを被せてきたのではないでしょうか。10年前の朝ドラが同じNHK-BSで再放送されるからこそ実現できた、奇跡のコラボだったように思えてならないのです」(前出・テレビ誌ライター)
万太郎のモデルである植物学者の牧野富太郎博士は、祖母が亡くなった後で寿衛子に出会い、同棲に至っていた。それに対して「らんまん」では万太郎が寿恵子を連れて故郷の佐川に帰郷しており、史実とは異なる創作要素となっている。
よもや「あまちゃん」とのコラボをするために万太郎を帰郷させたわけではないだろう。だがこの創作要素があったからこそ、10年の時を経たセリフのコラボが可能になったのかもしれない。