再放送に注目していたのは作品のファンだけではなかったようだ。
7月18日に再放送されたNHK連続テレビ小説「あまちゃん」第92話では、ヒロインのアキ(能年玲奈)が出演するドラマを観るために、天野家がHDDレコーダーとプラズマテレビを導入。この場面に家電メーカーのシャープが反応していたという。
シャープの公式ツイッターでは放送後の午前10時、「これ、天野家にテレビを運んだ役者さん本人から、私が運びましたという連絡もらった思い出」とツイート。しかも本放送で第92話が放送された2013年7月16日のツイートを自らリプしていたのである。
2013年のツイートによると、天野家が買い換えたテレビは「外装箱がアクオスそっくり」だそうで、どうやらシャープの液晶テレビを2009年当時の最新プラズマテレビとして作中に登場させていたようだ。
「この場面に疑問を持った視聴者もいたはず。液晶テレビに強みを持つシャープでもプラズマテレビを扱っていましたが、43インチ超の製品に限られており、作中に登場した32インチのプラズマテレビは扱っていなかったのです」(IT系ライター)
それではなぜ、存在していないはずの「シャープ製32インチプラズマテレビ」なるものを、「あまちゃん」では登場させていたのか。それは当時の世相を反映していたからだというの。
今でこそ100インチ超の超大型サイズまでラインアップする液晶テレビだが、作中の2009~2010年当時には40インチ超の大型化が難しいとされていた。一方でプラズマテレビは構造上、大型化が容易。家電メーカー各社は40インチ超の大型プラズマテレビを市場に投入しており、当時はプラズマテレビこそが最先端の薄型テレビという認識だったのである。
ただ、それなら天野家でも大きなプラズマテレビを導入すればいいだけの話。なぜわざわざ「32インチのプラズマテレビ」という虚構を映し出していたのか。そこには演出上の理由があったのかもしれない。
「アキが出演するドラマをみんなで観るため、このタイミングで新しいテレビを購入したという演出が欲しいところ。しかし40インチ超の大型テレビはあまりにも大きすぎて、持ち運びや設置のシーンを描くのさえ大変です。そこで作中ではあえて取り扱いやすい32インチを買ったことにしたのではないでしょうか」(前出・IT系ライター)
「あまちゃん」第92回で描かれている2010年は、今からわずか13年前ながら、家電やIT機器の歴史的には数世代も前の時代。アイドルを巡る環境も当時とは激変しており、今となっては時代の移り変わりを実感させる物語となっているようだ。