友情物語のはずが、視聴者はすっかり白けていたようだ。
2月15日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第95回ではヒロインのスズ子(趣里)が、旧友のタイ子(藤間爽子)を泣きながらハグ。二人して涙する場面が描かれた。
スズ子はタイ子が病床にあることを知り、靴磨きで生活費を稼いでいる息子の達彦(蒼昴)をアシスト。仲良くなった街娼たちが達彦の客となり、この日は普段よりはるかに多く稼ぐことができていた。
しかしタイ子は達彦がどこからか金を盗んできたのではと勘違い。返してくるよう叱ったところにスズ子がズカズカと上がり込み、自分が客を集めたことを明かしたうえで「ワテとタイ子ちゃんは心の友やからや。助けるんわ当たり前や!」と、かつての友情をアピールだ。
「母親と夫を相次いで亡くしたタイ子は、歌手になる夢を叶えたスズ子と自分を比べてしまい、スズ子からの施しを拒否。ここでスズ子はいつもながらの押し付けがましさを発揮し、タイ子との思い出話を語っては旧交を温めようとしていました。どうやら制作側は感動の再会を演出したつもりだったようですが、視聴者はこの展開に疑問を抱かざるを得なかったようです」(テレビ誌ライター)
芸者の娘だったタイ子は「東京のいい人」との縁に恵まれ、結婚。だが母親を病気で失い、夫も戦死していたという。
その境遇が不憫なのはもっともだが、視聴者としては<なぜスズ子はタイ子と会っていなかったのか?>との疑問を抱かざるをえなかったことだろう。
スズ子が梅丸少女歌劇団で活躍するなか、タイ子は夫と共に上京。その後、スズ子は梅丸楽劇団にスカウトされて上京していた。大の親友なのであれば、その時点で東京に住むタイ子に会いに行くはず。なによりスズ子は東京に身寄りがないのだから、貴重な同郷の親友を頼るのが人の情というものだろう。
「ところが今回、偶然の再会を果たすまで、スズ子がタイ子を訪問することはありませんでした。それなのに達彦には『タイ子は福来スズ子の生みの親や!』と言い放つのはあまりにも調子が良いというのも。タイ子への熱い友情を発揮したように見えて、実は薄情な人間だったことが明らかになった形かもしれません」(前出・テレビ誌ライター)
スズ子のそんな人物像はもちろん、制作陣が考えたものだ。達彦への施しなど情の深い人物に見せようとしつつ、実は情の薄さばかりが浮き彫りになってしまったのは計算外だろうか。肝心の視聴者はスズ子の振る舞いに「調子ええやっちゃなあ」と呆れていたようだ。