伊藤沙莉が主演を務めるNHK朝ドラ「虎に翼」が、急展開を迎え、戸惑う視聴者が少なくないという。
女性として日本で初めて法曹の世界に飛び込み弁護士や裁判官を務めた三淵嘉子さんがモデルの同ドラマ。女性の地位が低かった時代に、困難に立ち向かいながら道を切り開いた猪爪(佐田)寅子(伊藤)の姿が描かれている。登場人物も魅力的で、テンポ良くストーリーが進むことで女性を中心に人気を獲得。視聴率も前々作「らんまん」、前作「ブギウギ」を超える勢いで、久しぶりに朝ドラらしいヒット作が生まれたことになった。
「伊藤の演技が素晴らしく、様々なメディアで絶賛されていることで視聴率も好調です。特に、ビデオリサーチ調べではF1層(20~34歳の女性)の支持が高い。録画視聴率も良く、見逃し配信でも常に高い数値。ちょっとした、『虎に翼』フィーバー状態で、年末の紅白歌合戦で伊藤を司会にしようという動きまで出ているほどです」(民放関係者)
となれば、このまま高視聴率で最終回まで行きたいところだが、ここに来て雲行きが怪しくなってきたという。第9週「男は度胸、女は愛嬌?」から、主人公たちは本格的に戦争に巻き込まれ、次々と悲劇が描かれ始めた。
まず、寅子の兄である直道(上川周作)が戦死し、さらに寅子の夫・優三(仲野太賀)までも戦病死していたことが判明。さらに5月29日に放送された第43話では、寅子のことを常に応援してきた父の直言(岡部たかし)が栄養失調と肺炎で死去するなど、次々と主要キャラが退場。
「中でも優三は仲野の演技が素晴らしく、ドラマ内でも屈指の人気キャラでしたからね。寅子と結婚し子どもも生まれたばかりで視聴者は幸せなストーリー展開を期待していた矢先の死亡。これまでコミカルな演出も多く、前向きで明るい寅子や優三のファンが多かっただけに、SNS上の視聴者からは、『見ていて辛い』、『心がキツイ』、『鬱展開がわかっているから、録画を見る気になれない』など、ストーリー展開を悲しむ声が多くあがっているんです」
ドラマは史実を基にしており、優三のモデルとなった人物も引き上げの途中で戦病死しているので、優三の死は予想されることではあった。が、そうわかってはいても、実際にその通りの展開を迎えると反響はすさまじく、NHK内でも視聴者離れが起きないかと心配の声も出ているとか。NHKも担当するテレビ誌記者が説明する。
「父・直言は、最終的に自身のあやまちをコミカルに暴露して亡くなるという形にし、なるべく悲しくない展開で視聴者離れを食い止める演出を行いました。それでも、メインキャラの死は悪い意味で大反響となり、SNSでは見るのをやめるという声も大きくなったんです。今後は弁護士として復帰する寅子の姿がメインで描かれますが、その道のりは険しく、“鬱展開”が続く可能性が高い。また、優三や直言に代わる新キャストが続々と発表されていますが、意外性が無い名前ばかりで視聴率が落ちると心配されている。テコ入れをすべく、NHKもキャストを様々なNHKの番組でゲストに招き、総力戦で『虎に翼』のバックアップをしています」
5月30日放送回のラストでは、河原で失意に沈む寅子が、自分の隣りに優三の幻影が現れたかのように、優三が生前語っていた前向きに生きてほしいとのメッセージを回想し、号泣。しかし、その後、寅子は何か吹っ切れたような表情を見せていた。鬱展開を何とか乗り越え、また元気で明るい寅子の姿を見せてほしい。
(渡邊伸明)