香取慎吾の才能は青天井だ。歌手であり俳優、画家であり舞台役者。アイテムのデザインも手掛ける真のマルチクリエイターだ。現在、東京・東京国立博物館で開催中の展覧会「カルティエと日本 半世紀のあゆみ 『結 MUSUBI』」(7月28日まで)に、2017年に制作した絵画「時間が足りない」が展示されている。
17年といえば、香取の人生の転換年。前年の大みそかにSMAPが解散したのである。メンバー5人は不本意な形でバラバラとなり、香取は稲垣吾郎と草彅剛と17年に旧ジャニーズ事務所(現STARTO ENTERTAINMENT)を退所。同年以降、3人の地上波レギュラー番組が次々と終了していった。
そんな最中、“デザイナー香取”にオファーしたのが、フランスの高級宝飾ブランド・カルティエだった。時計シリーズ・タンクの100周年を祝した記念イラストのオーダーで、香取は「時間が足りない」を描いた。その1枚が7年の時を経て、カルティエの日本上陸50周年を祝して“凱旋”したというわけだ。
運命には、続きがあった。展覧中のオープニングイベント(6月10日)で、ビートたけしこと北野武と再会できたのだ。たけしは、奇しくも、香取がカルティエからオーダーを受ける7年前の10年に現代アーティスト・BEAT TAKESHI KITANO名義で、フランス・パリで初の日本個展「BEAT TAKESHI KITANO 絵描き小僧展Fondation Cartier pour l‘art contemporain」を開催。カルティエ現代美術財団で、実に6カ月にわたるロングランを成功させていた。
天才コメディアンであり、世界的映画監督でもあるたけしを体感するために、香取は渡仏。バックパックで地下鉄を乗り継いで、1人で観にいった。現地でたけしの分厚い図録を2冊購入。リュックに入れて帰るのが重くて大変だったが、1冊はサイン入り、もう1冊はサインなし。いつかは本人からサインをもらいたいと思って、2冊購入した。
「ずいぶんたってからある局で、たけしさんがいることを知って楽屋を訪問しました。個展のためにフランスまで行ったことを伝えて、サインが書かれているほうの図録を差し出した。『サインをください』とオーダーして、サインを2つ並べた。“世界に一つだけの”Wサイン入り図録を完成させたのです」(芸能リポーター)
開催中の展覧会オープニングイベントには、たけしも参加。「時間が足りない」を観たいというたけしのリクエストに応えて、一緒に鑑賞。絵との“3ショット”を撮った。
香取とたけしには、まさに結ばれた縁があったのだ。
(北村ともこ)