メディアやSNSなどで話題になっている“内臓脂肪減少薬”の「アライ」をご存知でしょうか。有効成分オルリスタットが食事由来の脂肪分の吸収を抑制し、脂肪分の約25~30%を便として排出できるとされる画期的な薬です。処方薬ではなく薬局で買えるので、手軽に手に入れられます。
本来、体内に吸収されるはずの脂肪の一部が身体の外へ排出されて内臓脂肪が減少するのはうれしいですよね。そして、その排出のプロセスはこれまで体験したことのない新感覚なもの。その効果は? うまい服用方法は? 調べてみました。
■オルリスタットの効果とは?
オルリスタットとは、脂肪分解酵素リパーゼの阻害剤のこと。食事由来の脂肪が体内に吸収されるには、膵臓から分泌されるリパーゼという脂肪を分解する酵素の働きが必要です。そのリパーゼに脂肪を分解させないようにして、脂肪が体内に吸収されないようにするのがオルリスタットです。
分解されなかった脂肪は便とともに、摂取した脂肪の25~30%がそのまま排出されるといわれています。
■避けられない脂肪の排出に伴う事象とは?
ここまではオルリスタットの素晴らしい効果に拍手喝采ですが、ちょっとした問題が起きています。それは、便とともに脂肪が排出されるときに“ただの下痢”では済まされないほど、本当に油が漏れ出すというのです。
想像してみてください。もし、便と一緒にサラダ油が出てきたらどうしますか? おならをすれば油が漏れ出し、トイレに行くまで間に合わなかったり、睡眠中など油断している隙に油が漏れ出したりすることが、実際のユーザーの体験談からも多数確認されています。
「アライ」の販売元である大正製薬によると、アライは国内臨床試験でも内臓脂肪面積と腹囲の有意な低下が確認されている一方で、試験中に油の漏れ、便を伴う放屁、脂肪便などが特有の事象として確認されたそうです。
ただし、これらは全員に発現するわけではなく、このような消化器症状が発現した人は全体の58.3%。消化器症状がなかった人は41.7%とのことでした(アライ長期投与試験より)。
■うまい服用方法ってあるの?
これらの問題に対し、油漏れなどとうまく付き合っていく方法はあるのでしょうか?
大正製薬セルフメディケーション臨床開発部のグループマネージャーである藤田透さんは、その特有の事象との付き合い方について次のようにアドバイスしています。
「消化管における脂肪の吸収を抑えることで脂肪を便中に排出するという作用機序から、主作用である脂肪排泄による肥満の減少と特有の事象である便漏れや脂肪便の関係は、まさに表裏一体にあるといえます。その点をきちんと理解されていないと、他の薬ではあまりみられない特異な事象に驚かれるかもしれません。服用にあたっては、まずは作用機序を正しく知っていただくことが前提になると思います」
「使っているうちに、脂肪の多い食事の後は特有の事象も強いが、脂肪の少ない食事の後は特有の事象も弱くなるなど、食事と特有の事象の関係が理解できるようになります。その結果として、どんな食事に脂肪が多く含まれているかを学び、同時に脂肪の多い食事はなるべく避けるといった、新たな行動変容にもつながると期待しています」
大事なのは、脂肪が減ると同時に、これまで蓄積してきた脂肪を作り出した自身の悪習慣を断つこと。特有の事象はそのための“儀式”のようなものと捉え、脂肪が少ない食生活に自然とシフトしていければいいですね。