埼玉県物産観光協会の友人から「久喜市におもしろい夏祭りがありますよ」と情報提供があった。あらら。最近行ったばかりだと受け流そうと思ったが、資料や動画を見てみると…。
というわけで、前回に続き、埼玉県久喜市に来ている。目当ての祭りは、毎年7月12日・18日に疫病退散、厄除け、町内安全を祈願して行われる八雲神社の祭礼で〝久喜提燈祭り「天王様」〟という。八雲神社は曹洞宗の古刹・天王院の境内にあり、旧名が牛頭天王社であったことから天王様と崇められている。
この日は祭りの最終日。正午前にJR・東武スカイツリーライン久喜駅西口から提灯祭り通りを進むと、最初の交差点に人だかりができていた。粋なハッピ姿の初老男性に聞くと「これから4町の手打ちがあるから」と教えてくれた。
しばらくすると氏子地域7町のうち4町の山車が集結。それぞれの祭典保存会長が挨拶し、三・三・一の手打ち(手締め)を行った。熱気が高まり、よそ者のオイラも興奮してきた。
山車の高さは約7メートル。四輪の車台に唐破風屋根の舞台が乗り、その上に神話などを題材にした人形が乗る。素戔嗚尊、日本武尊、神功皇后、織田信長など7町で人形は異なる。
4台の山車は提燈祭り通りを進み、八雲神社の御神輿が置かれた御仮屋前で停車。通りの反対側から残り3台の山車も来て、7町7台の山車が勢ぞろいした。
神事のあと、御神輿と山車は久喜駅西口ロータリーへ移動して手打ちを行い、町内を巡行する。一説では約240年前、浅間山の大噴火で農作物が全滅した際に祭礼用の山車を引き回して豊作を祈願したのが、祭りの起源だそうだ。山車と一緒に歩いたり、追い越したり。すっかり童心に帰ってしまった。
この夏祭りがひと味違うのはここから。昼の巡行が終わり、各町へ戻ると人形山車から提灯山車への組み替えが始まる。まずは人形や彫物などを外し、御神酒所に移す。次にやぐらを組み、4面に500張ほどの提灯を下げていく。
文化祭の準備さながらに大人が喜々として作業に励む姿は微笑ましく、少しうらやましくもあった。日が暮れると提灯のロウソクに火が灯され、それぞれの町内を巡ってから再び久喜駅西口ロータリーに集まる。
にぎやかなお囃子が響く中、引き手が挑発し合い山車をぶつけたり、やぐらが乗る舞台をぐるぐると回転させたりして、祭りは最高潮を迎えた。やっぱり夏祭りはいい!
内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。