久しぶりに出演者の本気が伝わってくる「アナザースカイ」(日本テレビ系)を見せてもらった。
1月18日放送回のゲストだった吉谷彩子は、2016年から放送されている転職サイト「ビズリーチ」のイメージキャラクターとして多くの人々に知られるようになったが、実は3歳の時に子役デビュー。芸歴30年になるいわば「ベテラン」だ。
ネコ好きの間では知らない者はいない、ネコが主役のドキュメンタリー番組「岩合光昭の世界ネコ歩き」(NHK BSプレミアム4K、NHK BS、NHK)でカメラマンを務める動物カメラマンの岩合氏とその妻、および娘の実話をドラマ化した作品「アフリカポレポレ」(NHK)で娘役を演じた吉谷は当時8歳。その時に約2カ月間の撮影が行われたケニアを、今回、25年ぶりに再訪した。
「ビズリーチ」で認知度が上がるまで吉谷は「オーディション、めちゃくちゃ落ちてましたから。100回受けて100回落ちるみたいな」と回顧。「中学、高校になると、すごくきれいでかわいい子もたくさん出てきて。自分はお芝居でずっとやってきたのに、なんで売れないんだろう、みたいな。すごく悔しくて。小さい頃からお芝居やってたから。『なんで自分より経験してない子が売れるんだろう?』って思ったこともあったし。『私のほうがお芝居できるはず』とか思うこともあって」と、率直な言葉で当時の心情を明かした。
この時の吉谷の顔が本当に悔しそうで、悲しそうで、これが演技だとしたら、吉谷はオーディションを100回受けて100回落ちることなどなかっただろう。吉谷の素の感情から来る表情だったから胸を打たれたのだと思う。
高校生の頃は、「もう俳優を辞めるつもりで受験勉強してました」とも。そんな頃に「アフリカポレポレ」の監督で、吉谷が「芝居のいろは」を教えてもらい、ずっと交流していた富永卓二監督が舌下腺がんで入院した。見舞いに訪れた吉谷が「お仕事辞めたいな」と冨永監督に相談すると、「『おまえは地道にやっていくんだ!』『なんで、そんなこともわかんねぇんだ!』って怒られて。『じゃあ、今日は帰ります』って言ったら、『おい』って言われて。『頑張れ』って言われたんですよ」とポツリ。
「私、好きじゃなかったんですよ。『頑張れ』って言葉。みんなに言われなくても頑張ってるのに、“自分が一番わかってるよ”って思ってて」と、吉谷は振り返る。しかしその3日後に冨永監督が亡くなり、「『頑張れ』って言葉、嫌いだったけど、きっと監督は精一杯、振り出した(「絞り出した」と言いたかったのかも)言葉だったんですよね。(舌下腺がんため言葉が聞き取りにくくて)いっぱい語ったら聞こえないだろうから、その『頑張れ』の中にいろんな感情がきっと入っていて」と涙をこらえながら続けた。
さらに、「背中で聞いた『頑張れ』ってただの言葉だったけど、あれが忘れられなくて…。『おまえ、頑張るんだろ?』って監督が言ってるような」と、涙をこぼしながら語る吉谷の言葉に、「私はこれからも俳優として生きていく」という確固たる意志を感じた。
また、吉谷の「ここが私のアナザースカイ!」という番組独自の決めゼリフも気持ちよく胸に響いた。番組冒頭では、MCの今田耕司から「ビズリーチ!」と言われ、即「ビズリーチ!」と笑顔で返していた吉谷。「今が幸せ」と語る吉谷を見ながら、本当によかった、これからも地道に俳優として歩んでほしいと素直に思った。この日の「アナザースカイ」を見たら吉谷を見る目が変わるんじゃないかな。
(森山いま)