東京都は年末、世帯年収760万円未満を対象に、私立高校の授業料を実質無償化して教育機会の平等化をはかると発表。また、政府はお金がなくても大学や短大に行けるようにと、2017年度から返済不要な給付型奨学金をスタートすることを発表しました。
この格差社会の中で、親の経済状況によって子どもの間でも教育格差ができあがり、それゆえに貧困が連鎖していくという現状。これを打開するための策として、お金がなくても教育を受けられるようにという政策が進んでいますが、批判する人も少なくありません。
2月には毎日新聞の投書欄に、67歳の男性の意見が掲載されました。内容は、給付型奨学金について「健康であればアルバイトで賄える」という苦言。同様に、「自分もアルバイトで払った。今の若者は甘やかされている」という声は、巷ではよく聞く話です。
ネット上でも、私立高校無償化について、「金がないなら努力して公立に行けばいい」「本当に勉強したいなら、努力して公立に行くか、バイトしてでも私立に行くはず」という声が上がっていますが、実際にこうした制度を利用することになる子どもたちは本当に「甘い」のでしょうか。都内の児童福祉関連の職員はこう話します。
「現状としては、都立高校は入試に向けて進学塾でしっかり対策をとるのが一般的になっています。そんな中、教育にかけるお金や情報収集力などで格差の下にいる家庭の子どもが遅れをとっていき、受験に失敗したり、選択肢がなくなったりして私立高校を選ぶことになるというケースが多いんです」
私立高校に入学後、こうした家庭の子はアルバイトで学費や教材費などをまかなおうとすることも多いと言います。しかし、
「そのために家で十分な勉強時間がとれず授業についていけなくなり、高校を中退することになるケースも多い。また、3年生になってもアルバイト三昧が続き、大学受験はあきらめるという子がほとんどです」(前出・児童福祉関連職員)
大学にしても、私立では年間100万円前後となる学費と、さらに生活費などをアルバイトでまかなうのはかなり困難で、その努力の末に健康や生活にほころびが生じてくる学生は少なくないのだとか。
賛否両論はあるものの、支援される側を「努力が足りない」と切り捨ててしまう前に、その背景や現状をしっかり見据えたほうがよいかもしれません。