【フェイクマミー】これこそが「野呂佳代のムダ使い」予定調和の犠牲になったリアリティーあふれる演技力
12月12日に最終回を迎えた波瑠と川栄李奈がW主演したドラマ「フェイクマミー」(TBS系)。
第1話のスタート時から予想されていたストーリー展開の通りに、薫(波瑠)の「偽ママ」がバレ、茉海恵(川栄)の仕事が暗礁に乗り上げ、茉海恵の娘・いろは(池村碧彩)に退学騒動が起き、いろはの担任教師であり、かつて薫の家庭教師兼初恋相手であり、茉海恵が現在進行形で好意を持っている智也(中村蒼)が味方に。当初は茉海恵を演じていた薫にキツく当たっていた「柳和会の“三羽烏”」も、「柳和会」会長の九条玲香(野呂佳代)の娘の危機を薫が救ってくれたことから態度を軟化させ、最終回ではいろはの退学処分を学校側に撤回させるための署名運動を率先して行い、最終的に大団円で幕を下した。これぞ予定調和の最たるものだが、予想されていた展開をズレることなくなぞるように展開していくプロセスは、落ち着いて見ていられるという安心感があった。
しかしこれぞ「野呂佳代のムダ使い」だったように思う。
名門私立・柳和学園小学校の保護者組織「柳和会」会長であり、夫が文部科学大臣という自身とは真逆の「九条玲香」を演じる野呂には、もっと心の機微を演じるシーンがほしかった。ロールプレイングゲームのストーリー展開のように、第1事件が起きたら「この人はこう変化する」、第2事件が起きたら「今度はこう変化する」といった単純な「成長プロセス」ではなく、薫に共感はするけれど
応援はできない気持ちで揺れるシーンや、娘や夫に見せる顔とは違った、薫と同じ「子を思う母の顔」を見せるシーンなどがあれば良かったのにと、思わずにいられない。
「〇〇のムダ使い」という言い回しは、最近よく使われる。最近の「ムダ使い」シリーズの中で、今回の「野呂佳代のムダ使い」はトップクラスに入るのではないだろうか。
2023年からスタートしたシナリオコンクール 「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」で第1回大賞を今作で受賞した園村三氏には、リアリティーの追求とフィクションの大胆さとの折り合いのつけ方を研究していただきたい。
(森山いま)
