老後に破産、あるいは破産しないまでも極度の貧乏に陥るのは嫌だし、怖い。本記事を読む淑女の皆様も多くがそう思われているだろうし、筆者自身も(現在58歳だが)「自分の老後について怖い!」と思っている。それでは、老後破産に近づかないために、どうしたらいいのか。
海外留学したMBAなどがよく言うプレゼンテーションの定石に、「取りあえず、ポイントが3つあると言って話し始める」というやり方がある。さっそく真似しよう。
「実は、老後破産を防ぐポイントが3つあるので、これからお伝えします!」
第1のポイントは、老後の生活費と現役時代の生活費を、大まかでもいいからリアルに計算することだ。具体的に計算せずに、漠然と不安に思っていると、良くない話に引っかかりがちになるし、いつまでも心配が消えない。
計算方法の詳細は省くが(難しくない。何冊かの拙著で解説しています)、会社勤めの方(年金は厚生年金がある)の場合、個人差はあっても、おおよそ手取りの収入の2割程度を蓄え続けると(浪費家には厳しい数字だ)、老後を現役時代の7割くらいの生活費支出で暮らすことが出来る計算になる場合が多い。
会社員ではなくてフリーランスの働き方の場合は、公的年金が国民年金だけなので、手取りの収入から、もう5%か10%よけいに蓄えなければならないし、専業主婦の場合は、ご主人の収入から現実に必要な貯蓄が出来ているかを、しっかりチェックしなければならない。
将来は、経済にも、人生にも、いろいろな変化があるが、貯蓄が足りていると柔軟に対応出来る。そして、計算上、現役時代に送っていた生活と大きくは違わない生活が出来るはずだと考えると、いたずらに不安に思う必要はない。「明日悩んだらいい不安」に今日悩む必要はない。
第2のポイントは、国の制度を有効に利用することだ。
課税される所得がある方は、確定拠出年金を使うことで大きな税制上のメリットを得ることが出来る。老後に備えた貯蓄は必ず要るが、第1番目に有利なお金の置き場所は確定拠出年金なので、これを最大限に利用したい。
また、公的年金は通常65歳から支給が開始されるが、この開始を遅らせることで、1月あたり0.7%年金支給額を増やすことが出来る。現在の制度上、最大70歳、即ちプラス42%まで年金を増やせる。平均寿命を考えると現在でも支給開始を遅らせることが有利だし、「長生きのリスク」への備えとして堅実な方法でもある。
第3のポイントは、「他人」に十分注意することだ。特に注意すべき他人は、ズバリ「金融マン」だが、友達の口コミなどにも注意するほうがいい。
老後を不安に思うと、つい儲け話に参加したくなったり、個人年金保険のような一見堅実そうだけれども、実質的な手数料が高くて(保険会社と販売会社が儲かる!)契約者にとって損な商品に惹かれたりする。
「無料」であっても、金融機関の「相談」に近づいてはいけないし、いかにも真面目で誠実そうな金融マンこそ(自分の会社に忠実な人なのだから)気を付けなければならない、と申し上げておく。
(経済評論家・山崎元)