「もう、この年だ」
アラン・ドロンはそう言って81歳での引退を宣言した。一方、日本では生涯現役を通すシルバーエイジの俳優の活躍が目立っている。
現在84歳の仲代達矢は52年に俳優座養成所に入って活動をスタートさせ、今年で俳優人生65年を数える。6月3日公開の最新主演作「海辺のリア」では、認知症の元映画・演劇界の大スターという自らのイメージを重ね合わせたような役に扮している。
「劇中ではシェイクスピアの『リア王』の長ゼリフを1カットで言い切っていました。その迫真の演技は名優の名にふさわしいと言えますし、芝居にかける旺盛な情熱と闊達な姿で若い俳優たちに良い刺激を与え続けています」(映画ライター)
また、テレビでも倉本聰脚本によるオールスターキャストのドラマ「やすらぎの郷」(テレビ朝日系)が話題を集めている。出演者の中の最高齢は86歳の八千草薫。彼女は47年に宝塚歌劇団に入団していて、今年で芸歴70年と仲代を超える。それに続くのが、やはり宝塚歌劇団出身の有馬稲子で、今年で芸歴68年の85歳。
「このドラマは実際にあり得そうなところが魅力の一つでもありますが、他人から常に“見られる”職業のスターが80歳を過ぎてもバリバリの現役でいるということ自体、まさしく現代社会を映す鏡ではないでしょうか」(テレビ誌記者)
老いてなお燃え盛る役者魂に拍手を送りたい。