草なぎ剛、木村拓哉と今では俳優としての活躍が主となっている元SMAPの面々。その中で中居正広は、彼らに比べると役者経験が少ない。だが、本数は少なくとも、名作ぞろいだ。特に印象深く、反響があったのは2008年に公開された主演映画「私は貝になりたい」ではないだろうか。
同作で中居は、第二次世界大戦終戦後に無実の罪で処刑される主人公の元兵士を演じた。最初の劇場版が公開された1959年からおよそ50年ぶりにリメイクされるとあって、制作前から期待が高かった。そのせいか、中居は半年ほどの撮影期間でおよそ9kgも痩せたという。全国各地でのプロモーション、取材数も過去最大となった。
そんな緊張感が張り詰めた撮影のさなか、静岡・御殿場での雨のシーンで中居は思わぬ人物と顔を合わせることになる。映画誌の取材記者が振り返る。
「朝の8時から18時まで、雨に打たれっぱなしの超過酷な撮影をしていた時のこと。中居に『うぉーい』と図々しく声をかけてきたエキストラがいたのです。彼は最初、怪訝な顔をしていましたが、よく見ると相手は地元・神奈川県藤沢時代の学友。しかも3人も。エキストラ募集を見た友人たちが面白がって参加したそうです。中居は『おまえ、気が抜けるよ。この大事な所で』とあきれ顔でした」
意外だったのは彼らの衣装。深緑の地に金のラインが入ったスーツで、明らかに中居よりも高級そうだった。
「『おめぇ、なんで俺より偉い役なんだよ』と言う中居に、『知らねーよ。来たら、いきなりこれを着させられたんだよ』と返す友人。その後も『いちいち、うるせぇよ!』などと交わされた中居と友人のやり取りを聞いて現場スタッフは、ただ呆然とするしかなかったそうです。その夜は、映画の主人公とエキストラがファミレスで夕食を共にするという、なんとも不思議なシーンが見られたとか」(前出・映画誌記者)
友人はみんな会社員で、撮影日がたまたま週末だったため参加できたのだとか。映画「私は貝になりたい」は、そういった意味でも中居にとって思い入れ深い作品と言えるのかもしれない。
(北村ともこ)