四大陸フィギュアスケート選手権で優勝を果たした紀平梨花選手。SPはジャンプで調子が出ず、十八番のトリプルアクセルがシングルになるという失敗により5位に。そこから紀平選手を奮い立たせたのが、フリー当日の朝に濱田美栄コーチからかけられた「これはきっと勇気をもらう旅なんだから、ライオンになりなさい」という言葉だった。
「濱田コーチの頭に童話の『オズの魔法使い』が浮かび、物語に出てくるライオンを思い出したのだそうです。『オズの魔法使い』は、竜巻で知らない国に飛ばされた少女が元のところに帰れるように頼むために、大魔法使いのオズに会うため、旅に出るストーリー。物語の中で、知恵が欲しいカカシ、心が欲しいブリキのきこり、勇気が欲しいライオンに出会い、力を合わせて困難に立ち向かって行くのです。しかし、カカシもブリキのきこりもライオンも、困難に立ち向かって行く中で、自分たちが欲しいと思っている力を知らず知らずのうちに発揮し、解決して行きます。濱田コーチは『勇気をもらう旅』という言葉で前向きになれる勇気を奮いなさいと伝えたかったのかもしれません」(スポーツライター)
しっかりと濱田コーチの激励に応えた紀平選手。ケガを負いながらのSPでも5位に腐ることなく「もっとできないかと思ったのに、1つのミスだけで終われた」と、前向きに捉えていた。
どんなアクシデントもポジティブに捉える力。自分を信じる勇気。それが、紀平選手の逆転劇の裏にあり、その心を強く引き出したのが、濱田コーチの「ライオン」の言葉だったのだ。
(芝公子)