子どもと接するとき、こちらがよかれと思って(あなたの将来のために)、「こうしてみよう」「一緒にやってみよう!」と背中を押してはみたものの、子どもはああ言えばこう言うで逆のことばかり返してくる。教育やしつけをしないといけない立場としては、姿勢を正すように言えば今まで以上にだらけられ、片付けをしようと言えば散らかし始めるのでは、どうすればよいか分からなくなってしまいますよね。
そんな天邪鬼な子どもは、多くの場合「愛情を独り占めしたい」気持ちがあるようです。学習塾でも、全体に指示を出せばその真逆をいったり、先生を挑発するような態度をとる子がいます。それは、先生からの注目を集めたい一心からのようです。分からないところは教えて欲しいし、できたら自分だけ(一番に)認めて欲しい。そのためにわざと困らせるような態度をとり、先生がその子と一対一で対応する時間を増やそうとしているのです。
当時、年中だったKちゃんもそんな一人でした。他の子が上手に何かをしているのを見るとすぐに投げ出し、“やらない”ことで注目を自分に集めようとします。「鉛筆を持って!」と言う指示には、すぐさま鉛筆を鼻の穴に入れてしまう始末。なかなかどうして、指導者側のイライラポイントを押さえています。
でも、Kちゃんは変わりました。集団の授業の中で、準備がテキパキできていたり、姿勢がよかったり、課題に果敢に挑戦したり、自分の力で解答したり……そういった場面で他の子が認められているのを見て、我慢ができなくなったようです。Kちゃんだって、本当は素直に褒めて欲しいのです。
「Kも一番になりたい!」という気持ちから、積極的に手を動かし、そして、すごく頑張った子として、皆の前で先生に認められました。その頃から雰囲気も変わりました。いつでも先生の声に耳を傾け、指示をより早く、立派にこなせるようにとアンテナを張ります。前の自分よりもより立派にこなして、「認めて欲しい」という一心でした。
子どもは、お母さんには100%甘えられる。だからこそ、天邪鬼の面がより大きく出てきます。そんな場合は、家族以外の集団の場に送り出すことが一つの選択でしょう。他の子との、また大人とのやりとりの中で、自分を高めるためにと試行錯誤できるからです。前述のKちゃんも、家では甘えてしまって一切やれないそう。それでも、集団の場では持てる力を最大限に発揮できるのです。見栄を張ったり、他の子よりもと思ったりする経験が、子どもを一回り大きくするのです。
(Nao Kiyota)