元SMAPで“新しい地図”として活動中の稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾は今年、それぞれの主演映画が公開された。先陣を切ったのは稲垣。2月に「半世界」が上映され、6月に香取の「凪待ち」が封切られた。そして、9月26日までの3週間期間限定で、草なぎの「台風家族」が公開された。
同作で草なぎは、今年7月に逝去したジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川さんからの教えを体現していた。それを指摘するのは映画誌の編集者だ。
「本作は、家族の遺産相続がテーマ。草なぎは、長男のクズ男を演じています。『ゲスで結構』というオリジナルのダンスを踊るシーンがあるんですが、撮影前日に打ち合わせをしたいという市井昌秀監督のオーダーを拒否して、ぶっつけ本番。ジャニーさんの『YOU、やっちゃいなよ』精神を、あえて完全アドリブでやってみせたのです」
在りし日のジャニーさんは、その日招待で観にきた少年をいきなり舞台にあげて、ジャニーズJr.と一緒に踊らせることがしょっちゅうあった。演出や構成が本番直前、さらには本番中に変更することも当たり前。30年近くジャニーズにいた草なぎは、中学生にして高い対応力を身に付けていたため、主演映画でもそれを発揮したのだ。
草なぎは今夏、別のステージでも故人を思う行動に出ている。先の編集者が続ける。
「新しい地図として初の野外フェスとなった『氣志團万博2019』(9月15日)で、SMAP解散後に配信したオリジナルソングを熱唱しました。でも1曲だけ、斉藤和義の『歩いて帰ろう』を、草なぎはアコースティックギターでカバーしています。大好きだった大杉漣さんが関わっているからです」
18年2月21日、急性心不全で急死した大杉さんは、03年に放映された草なぎの主演ドラマ「僕の生きる道」(フジテレビ系)での共演をきっかけに、草なぎ作品に欠かせない名バイプレイヤーとなった。主演舞台「二都物語」(13年)の稽古場に大杉さんがギターを抱えてやってきて以来、草なぎはギターを習得。バラエティ番組「『ぷっ』すま」(テレビ朝日系)でギターテクニックを向上させるコーナー「ギターマンアルペジオへの道」を始動させ、大杉さんとセッションしたこともあった。
共通の趣味を持てたことに喜びを感じた大杉さんは、斉藤のライブに草なぎを招待。虜になった草なぎは以来、節目となる番組で、大杉さんに思いを馳せながら斉藤の歌を弾き語るようになった。
11月27日と28日には、東京・昭和女子大学人見記念講堂で「草なぎ剛のはっぴょう会」を初めて開催する草なぎ。28日には斉藤がゲスト出演する。
ジャニーさん、大杉さんへの不変の愛。多くを語らない草なぎには、譲れない流儀があるのだ。
(北村ともこ)