町の健康センターに数百人のマダムたちが集まり、色とりどりのサイリウムを揺らす。メンバーは華麗に歌い、踊り、そして客席に降りてファンとのスキンシップに余念がない。「噂のムード歌謡」アイドルグループ「純烈」のライブは、今、日本でもっとも濃密な空間かもしれない。今回はリーダーの酒井一圭を直撃インタビュー。
──リーダーだけでなく、プロデューサーの役割も担っていますが、この唯一無二なユニットを作ろうと思ったきっかけは?
酒井 役者時代に自主製作映画を撮っていて、脚を骨折してしまったんですよ。病院で入院している時に女房はお腹に2人目の子供もいる。もう潮時かなあ……と思っていたら、たくさんの人が見舞いに来てくれて。これは芸能界とお別れできないけど、ただ、どうやって展開していけばいいのか?
──人生の岐路ですね。
酒井 ふと思ったのは、僕ら戦隊ヒーロー出身って、たとえば僕の「百獣戦隊ガオレンジャー」で言えば、玉山鉄二のように1人は世に出て来る。そうなると残った人たちが実にもったいない。
──なるほど、そこにも逸材は多いはずだと。
酒井 そのメンバーを中心に、さらに演歌・歌謡曲の世界でジャニーズみたいなことをやったらどうだろう……。そんな視点で作ったのが「純烈」です。
──先見の明です。さて数えきれないライブの中で、忘れられない日を挙げるならば?
酒井 東北大震災の後に、福島・飯舘村の避難所に呼ばれまして。その前日にも有名な人が行ったけど、それでも「お前が来たところで何だ」という反応だったらしく、僕らも覚悟はしていました。ところが、最後にはたくさんの人が見てくれた。クサい言い方だけど「心」なんだと思いました。
──それが今なお、ですね。