東京都心部を環状で走る「山手線」、大宮駅(埼玉県)と横浜駅(神奈川県)を結ぶ「京浜東北線」。この2線が、完全に並走する区間が「田端駅~品川駅」の間。ここで、とある「現象」が起こると、鉄道ライター・鼠入昌史さんは言います。
「山手線と京浜東北線では使用している車両が違うので、走行性能に若干の差があります。ざっくり言えば、山手線の方が加速がよく、京浜東北線のほうがトップスピードが速い。なので、ほぼ同時に出発した場合に、抜きつ抜かれつの競争をしているような形になるんです」
区間内で、わずかながら先に駅に入ってきた京浜東北線に乗ると、次の駅までに山手線に追い越されて「なぜ?」と疑問に思っていた人も多いかも知れませんが、こんなカラクリだったのです。
「加速でリードした山手線が、徐々に京浜東北線に追いつかれる。さらに、停車性能が高い車両を使っている京浜東北線がギリギリまで速度を維持しているので、滑り込むように駅で両者が並びます。そして駅を出た後、また山手線が追い越し…という繰り返しなのです」(鼠入さん)
この並走区間での問題と言えば「どっちが速いのか?」。通常、先に来た方に乗る方が早く目的地に着くことは明白だが、京浜東北線の日中の快速運転時が悩ましい。
「田端~品川間でも、乗車時間は快速時に20分ほど(ダイヤによって前後あり)、各駅停車で26、7分ですから、5分以上待つなら山手線に乗っていいのでは。山手線のほうが乗客の乗降が多いので、席が空くチャンスも高まりますし、11両なので京浜東北線よりも1両多い。これによる混雑緩和の差も大きいです」(鼠入さん)
一刻一秒を争うならともかく、「駅に停車しているときに、快速も駅に入ってきた」という状況以外では、残念ながら、乗り換えてもそれほど効果はなさそうだ。