東京五輪サッカー男子代表DF吉田麻也が7月17日に開催された国際親善試合のスペイン代表戦後、五輪の有観客開催を「真剣に検討して頂きたい」と訴えた。
この日、五輪に向けた最後の強化試合にキャプテンとして先発出場を果たした吉田。白熱のゲームが1-1のドローで終えると、その後のフラッシュインタビューならびにオンライン会見にて、本番が無観客開催となった点について振られ、「なかなかアスリートがそこに関してコメントを発することが難しい状況にある」としつつ、徐々に本音を口にし始めた。
吉田は「(無観客か有観客かの議論では)どっちのコメントをしても叩かれる状況というのは個人的には間違っていると思う。この大会、オリンピックをやるにあたって、国民の税金がたくさん使われていると思います。なのに、国民がそれを観に行けないというのは、いったい誰のための、何のための五輪なのかという疑問がある」と問題提起し、「ファンの前でプレイしたい」理由として、子供達に与えられる夢の存在を指摘。
一方、「ソーシャルワーカーの方たちが毎日命をかけて戦っていることは理解しているし、五輪をやれるだけでも僕たちは感謝しなくちゃいけないけど、選手たちも毎日、命、人生をかけて戦っている」と複雑な胸中を漏らした。続けて、「だから、(有観客での開催を)なんとかもう一度考えてほしい。真剣に検討してほしい。選手だけじゃなく家族も戦っているので、その人たちが観られない大会なんて何のための大会なのかはクエスチョンがある。本当に、真剣にもう一度検討して頂きたい」とアスリートとしての希望を語った。
「有観客での開催を直訴するコメントを発する前には、『これはたぶん、あとで怒られますけど』と切り出しつつ、やはり観客の声援がラスト5分~10分の苦しい時間帯に大きな支えになると主張。この日のスペイン代表戦は有観客で開催され、声援をバックに世界最高峰の強豪国と見事なドロー試合を見せた日本代表ですから、本番も有観客で行いたいと願うキャプテンの思いもわかります。ネットでは、意を決して有観客での開催を再検討するよう直訴した吉田に対し、『好感度上がりました。ありがとうございます』『正論だと思う』『よく言った』『立派です』との声が多数書き込まれています。また、強化試合では有観客開催ができて、なぜ本番では客を入れることができないのかと指摘するコメントなども多く集まりました。
一方で、『命をかけてと言われても、実際はかけてないよね。無観客でも死なないよね。五輪をいつも通り盛大に開催すれば、感染者が増え亡くなる方も出るかもしれない』『命をかけてっていう言葉を使われると、途端に白々しいものを感じてしまう。病院で本当の意味で命の危機に直面している人がいる中で、彼らの言う命は本当に死ぬわけじゃない』『有観客にして感染拡大した場合でも吉田さんは責任を取れないだろう』『毎日、苦しい生活を強いられている飲食店を筆頭に、多数の業者の方々がいる。国民が歓迎しないオリンピックの中、試合ができるだけでも有り難く思わないと』などの反応も多く寄せられています」(テレビ誌ライター)
なお、吉田が発したメッセージに対し、代表チームメイトのMF堂安律も自身のツイッターアカウントにて「昨日マヤくんがオリンピック無観客について伝えてくれたことに被せてなんですが、これが選手達の意見です」と追随。チームが有観客開催を熱望していることで見解が一致している点を示唆したが、東京都でも連日にわたって新規感染者が1000人を超えている以上、なかなかそうした訴えが実現することは難しいと言わざるを得ないだろう。
(木村慎吾)