「ミュージックステーション」といえば、テレビ朝日系の生放送音楽番組。昨年、スタートから35周年を迎えた局を代表する長寿番組だ。ジャニーズアーティストでは昭和のたのきんトリオ(田原俊彦、近藤真彦、野村義男)、少年隊、光GENJIにはじまり、SMAPから現在のジャニーズJr.にいたるまで、ほぼ毎週出演。SP拡大版ともなれば、複数のグループが登場する。
スタジオには、頻繁に故・ジャニー喜多川社長が訪れた。決まって、リハーサルからチェック。演出の変更をゴリ押しすることが日常茶飯事だった。とまどう番組スタッフ、アーティスト、バックダンサーのことなどお構いなしだった。
KAT-TUNの亀梨和也はジュニア時代、嵐のバックで出演した。リハを見たジャニー氏は「それじゃあ、(バックダンサーが)目立たないよ。黒い手袋、用意して」と言いはじめ、その場から去った。戻ってくると手に黒い靴下を持っており、「YOUたち、これ着けちゃってよ」と渡された。ジュニアたちは急きょ、靴下を両手にはめて踊った。
その嵐はデビュー曲「A・RA・SHI」の“スケルトン衣装”が有名。あれも、ジャニー氏の思いつきだった。本来は白いTシャツのインナーを着用する予定だったが、本番直前になって突然「YOU、脱いじゃいなよ」と指示。上半身があらわになる透明のビニール衣装になり、20年以上経った今なおイジられることになった。
ジャニー氏は、「目立たせたいジュニアがいる」と突然少年を連れてきたこともあった。その少年が本番で突然センターにポンと入り、踊った。
「ジャニーさんに気に入られて“派遣”された子は、衣装も違う。ジュニアたちは赤ベストなのに、その子は黒いガムテープでデザインを入れられる。目立たせるために、急きょおそろいの衣装に手が加えられるのです。白いボトムスのサイドラインにも、黒いガムテが貼られたことがありました」(芸能ライター)
通称「Mステ」は、ジュニアたちにとってあこがれの番組。ジャニーズから毎週所属アーティストが送りこまれているが、ジャニー氏に手抜きはいっさいなかった。ジャニーズミュージカルを再現することもあり、最後の最後まで表現の場として重んじていた。
奇才すぎて常識を超えていたジャニー氏。「Mステ」スタッフは毎週肝を冷やしていたに違いない。
(北村ともこ)