昨年の実写映画興行収入でNo.1に輝いたのは、嵐の初のライブフィルム「ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”」だった。ライブフィルムが国内興収でトップになるのは史上初。日本人アーティストのライブフィルムでも興収1位だった。今年3月22日には、全米で上映。日米同時上映イベントもおこなわれ、活動休止中の嵐が再び世界に名を響かせた。
ライブの総合演出は松本潤。嵐のデビュー後から演出も兼務してきて、ドーム、スタジアムクラスの会場でも多くの「ジャニーズ初」を実現に導いてきた。
05年に考案したのは、アリーナ席の観客の頭上をステージが移動するムービングステージ。ステージごと移動することで、客席最後尾に近づいた。14年に導入したのは、LEDライトの一斉制御システムで変色するペンライト。これによって広がる大パノラマの景色は、2階席、3階席から見るとより美しさが増した。縦11m、横56mの超巨大モニターを採用したのも、後方客の視線を意識したもの。テニスコート3面分の面積で、パフォーマンスをより隅々まで届けた。
嵐が東京ドームに初進出したのは、デビューから8年後の07年。公演後に、当時SMAPだった中居正広がMCの音楽番組「うたばん」(TBS系)に出演した。その時、中居からジャニーズライブならではの指摘をされ、松本の心に刺さった。中居の言葉はその後の演出で生かされているという。
「ジャニーズのコンサートチケットは、料金が全席均一なんです。中居はSMAPでコンサートを開いていた頃、必ずその会場のいちばん後ろの席に座って、見え方を把握していたというのです。モニターも最後部の視線に合わせた設置。マツジュンは今、会場に入ると必ず最後尾の正面の客席に行って、どんな角度でどう見えているのかを頭に入れるそうです」(アイドル誌ライター)
嵐のライブは、回を重ねるごとにスケールアップ。費やせる予算や装置、演出、観客動員数、稼働しているスタッフの総数は国内トップレベルといっていい。松本が念頭に置いているのは、全席で楽しめる演出。ムービングステージ、一斉制御のペンライト、超巨大モニターはその表れだった。
ジャニーズ事務所の創業者の故・ジャニー喜多川氏が一代で築き上げたジャニーズワールドを継承する演出家・松本潤。その根底に流れているのは中居のアドバイス。嵐のライブには、SMAPのDNAが流れているのだ。
(北村ともこ)