結末を知っているからこそ、見えてくる魅力というのもあるようだ。
4月3日に再放送がスタートした2013年度前期のNHK連続テレビ小説「あまちゃん」が人気を呼んでいる。放送当時には「じぇじぇじぇ!」が大流行し、作品を観ていなかった人も知っているほどの人気ワードに。それが再放送であらためて<こんなにも「じぇじぇじぇ」って言ってたのか!>と、令和の視聴者を驚かせているのである。
4月6日放送の第4回には足立ユイ(橋本愛)が初登場。その美少女ぶりは10年経った今でも鮮烈さを放っている。翌4月7日の第5回では、「のちに二人がお互いにとってかけがえのない存在になろうとは、本人たちも知らなかったのです」とのナレーションが流れ、ヒロインの天野アキ(能年玲奈)との関係性も示唆されていた。
「令和に生きる我々は今後、アキとユイが北三陸にて『潮騒のメモリーズ』として人気を博すことや、アキが東京でアイドルグループに加入することを知っています。しかし放送当時の視聴者はそんな展開になることを知るはずもありませんでした。それゆえ再放送の視聴者はサプライズがサプライズではないとの残念さはあるものの、アキがアイドルになっていく姿に『待ってました!』と予定調和の喜びを味わうことができそうです」(テレビ誌ライター)
ともあれ第5回までだけでも能年に橋本、そして天野春子(小泉今日子)の学生時代を演じる有村架純と、未来のスター女優が目白押しの本作。よくぞこれだけの逸材を集めたものだと感心するところだろう。
その一方で「あまちゃん」の魅力にハマればハマるほど、なぜ本作が10年経った今でも傑作として語り継がれるのか、そして「ちむどんどん」や「舞いあがれ!」といった最近の朝ドラがなぜ酷評されるのか、その理由が垣間見えてくるというのである。
「前述のとおり『あまちゃん』では今後、北三陸の海女の話からアイドルの物語へと急ハンドルを切ります。リアルタイムで観ていた視聴者にしてみれば、本作がアイドルグループの話に展開するなど、想像もつかなかったことでしょう。しかし現在において『あまちゃん』の話をする際には、ヒロインのアキが活動していた『潮騒のメモリーズ』や『GMT47』の話題を避けて通ることは不可能。それほどにも海女からアイドルへの展開は視聴者に受け入れられているのです」(前出・テレビ誌ライター)
それが最近の作品ではどうなのか? 「ちむどんどん」ではヒロインの比嘉暢子がイタリア料理店から独立するとき、なぜか沖縄料理店を始めることになり、しまいには故郷の沖縄に戻るという展開に。その身勝手ぶりに多くの視聴者は空いた口がふさがらなかったものだ。
その傾向は「舞いあがれ!」にてさらに先鋭化し、ほとんどの視聴者はヒロインの岩倉舞がパイロットになる話だと思っていたのに、当の舞は航空会社の内定を辞退。家業の部品工場に入社し、しまいには町工場と町工場をつなぐ企画会社を立ち上げ、視聴者を<そんな話を観たいわけではなかった>と落胆させていたのである。
「物語が視聴者の予想を裏切る方向に展開すること自体は、何ら悪いことではありません。まさに『あまちゃん』はその成功例を示してくれたわけです。見方を変えれば『ちむどんどん』や『舞いあがれ!』の失敗は、物語の力が足りなかったからなのかもしれません。それが脚本家のせいなのか、それとも演出側の問題なのかは定かではありませんが、朝ドラに関わるスタッフにはぜひ、なぜ『あまちゃん』が成功したのかを今一度、振り返っていただきたいものです」(前出・テレビ誌ライター)
ともあれ「あまちゃん」の再放送を楽しむ側としてはまず、能年玲奈と橋本愛による「潮騒のメモリーズ」がどれほど可愛すぎたのかを再確認したいところだろう。