登場を待ちわびていた理由が、なんとも物悲しかったようだ。
4月14日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第10回では、主人公の槙野万太郎が少年から青年に成長。いよいよ神木隆之介が主役として登場を果たした。視聴者からは「待ってました!」の声が続出するも、その背景にはなんとも残念な状況があったという。
造り酒屋「峰屋」の跡取り息子である少年期の万太郎(小林優仁)は、祖母・タキ(松坂慶子)の溺愛を受け、好きな書物をふんだんに買い与えられていた。ある日、大坂から届いた書物は番頭の給与2カ月分という高額な代物。現代では100万円相当だろうか。これには峰屋の従業員たちが呆れ果てていたのも無理もないだろう。
第10回ではそんな万太郎を落胆させる事態が発生。明治維新に伴い学問所の名教館が閉鎖となり、代わりに小学校が開設され、万太郎も小学校に通うことになった。しかし名教館で学頭の池田蘭光(寺脇康文)から英才教育を受けていた万太郎にとって、「いろは」から始める小学校の授業は退屈そのもの。万太郎は授業をほったらかして庭の草花を観察するなど、自分の好きに振るまっていた。
「これらのエピソードは万太郎の自由奔放な性格に加え、植物学を中心とした学問への飢餓感を描写しているのでしょう。しかし多くの視聴者にとって万太郎は、裕福な家庭で育ったわがままな子供にしか見えないのもまた否定できないところ。子供時代の主人公は通常、天真爛漫さで視聴者の支持を得るものですが、こと万太郎に関しては『子役ロス』とは無縁のわがまますぎる子供として描かれていました」(テレビ誌ライター)
これは万太郎を演じる小林にとっても不本意だろう。演技については視聴者からも高く評価されている小林版の万太郎だが、いかんせん万太郎自身に感情移入しづらいことから、主人公の人気が高まっていないのである。
それもあってか第10回の終盤にて、青年になってからの万太郎を演じる神木が登場したときには、視聴者から「やっとか」といった声もあがっていた。これではさすがに幼少期を演じた小林が気の毒ではないだろうか。
「前2作品の朝ドラは評判が相当悪かったものですが、子役時代に限って言えば『ちむどんどん』で小5当時の暢子を演じた稲垣来泉や、『舞いあがれ!』で小3当時の舞を演じた浅田芭路は、視聴者から大いに愛されていました。当時は子役ロスを訴える視聴者が多く、浅田に関しては“子舞ロス”という言葉も数多く見られたもの。それが『らんまん』では子役時代の早期終了を願う視聴者が少なくなかったのですから、作品が違えばこれほどにも評価が変わるものかと驚くほどです」(前出・テレビ誌ライター)
果たして神木が主人公を務める第3週から「らんまん」への評価は好転するのか。身勝手で感情移入しづらいというキャラをどう変化させていくのか、制作陣の手腕と、神木の演技力が問われていくことだろう。