物語の展開としては納得できても、視聴者としては不安を募らせるしかなかったようだ。
4月16日に放送されたSPドラマ「TOKYO MER~走る緊急救命室 隅田川ミッション」(TBS系)では、ラストシーンにてTOKYO MERのライバルとなる横浜MERが登場。そのまま物語は4月28日に公開される劇場版のイントロへと続き、横浜・ランドワークタワーで発生した火災事故に両MERが駆け付ける様子が描かれた。
東京都知事の肝いりで創設されたTOKYO MERに対して、横浜MERは厚生労働省が全国にMER(緊急救命室)を展開する第一号モデルとなる組織。映画版では両者の対立が大きな見どころとなりそうだ。
その一方で今回、主人公の喜多見(鈴木亮平)が、かつて離婚した心臓外科医の千晶(仲里依紗)と再婚していたことが判明。しかも千晶は妊娠9カ月の臨月だという。その設定に視聴者は戦々恐々としているのである。
「劇場版の予告映像では、千晶がビル火災に巻き込まれ、身重ながら負傷者を必死に治療。そこに夫の喜多見が現れるも、逃げ遅れた二人が火に囲まれる絶体絶命の場面が描かれました。その描写に視聴者は、不吉な予感を抱かざるを得なかったのです」(テレビ誌ライター)
この「TOKYO MER」では喜多見ら緊急救命チームが危険な事故現場での治療に挑むも、難しい手術は常に成功。最後は東京都庁の危機管理対策室で、清川標(工藤美桜)が「死者、ゼロです!」と絶叫する場面がクライマックスとなっている。
それゆえ劇場版でも喜多見と千晶がビル火災から生還し、「死者、ゼロです!」が聞けるのではと視聴者としても期待したいところ。身重の千晶が無事に出産を果たすハッピーエンドになってほしいところだ。
だが劇場版では、視聴者のそんな期待を裏切る可能性が否定できないどころか、むしろ、最悪の展開を迎えてしまう恐れも十二分にありそうだ。その理由は何あろう、ドラマ「TOKYO MER」で示されていたというのである。
「2021年7月期にTBS日曜劇場で放送されたドラマ版では、必死の救命行為も叶わず、あの世に旅立ってしまった登場人物がいました。それは喜多見の妹・涼香(佐藤栞里)だったのです。涼香は喜多見のことを逆恨みするテロリストのエリオット椿(城田優)が仕掛けた水筒爆弾の爆発に遭い、喜多見による必死の救命措置を受けるも、本作品における唯一の死者となってしまったのです」(前出・テレビ誌ライター)
本ドラマの放送当時、涼香の死は視聴者に大きな衝撃を与え、「涼香ロス」を生んでいた。しかも涼香はTOKYO MERを支える医系技官の音羽(賀来賢人)と結婚しそうな流れになっていたことから、まさか彼女が死んでしまうとは誰も予想していなかったのである。
番組のファンからも賛否両論だった涼香の死。今回のSPドラマではTOKYO MERのオフィスに飾られている写真に、MERスタッフと共に涼香が写っている姿が確認できた。その写真に視聴者からは〈涼香が劇場版に出るところも観たかったなあ>との声もあがっていたのである。
「涼香の一件は、本作では誰も死ぬはずがないという視聴者の思い込みを残酷にも裏切る結果となりました。それゆえ劇場版においても誰かが死んでしまうかもしれないという疑念が生まれ、猛火にさらされる千晶や、それこそ主人公の喜多見が亡くなってしまう恐れを、視聴者はいやでも懸念せざるを得なくなっています」(前出・テレビ誌ライター)
単なるハッピーエンドに終わらせないことで、物語に深みを与えるという手法もあることだろう。果たして劇場版では「死者、ゼロです!」を聞くことができるのか。本作のファンとしては千晶や喜多見の無事を願うほかないかもしれない。