身体が弱いという設定はもはや、忘れ去られていたようだ。
5月31日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第43回では、主人公の万太郎(神木隆之介)が長屋仲間の倉木(大東駿介)を案内人とし、東京の植物を採集しに出かけていた。その行き先が驚くべき場所だったという。
夜になっても帰ってこない万太郎を巡って「若が倒れたかもしれません」と心配を募らせる竹雄(志尊淳)。やっと帰ってきた万太郎は竹雄の心配もどく吹く風で、採集してきた水草に興味津々の様子だった。
自分の部屋で水草を桶に入れた万太郎は「今日は葛飾の小合溜井いう溜め池に行っちょっての」と説明。その溜め池で底に根を張っていた水草は葉っぱが水に浮いており、その構造に興味を抱いていたようだ。
一日中歩き回っていたにも関わらず、夜を徹して水草の植物画を描いていた万太郎。とても子供のころに身体が弱かったとは思えないが、実際のところ彼の体力は底なし沼のレベルにあるというのだ。それは水草を採集した場所を知れば明らかだという。
「万太郎が口にした小合溜井とは、現在の都立水元公園および埼玉県営みさと公園に挟まれた場所にある溜め池のこと。八代将軍・徳川吉宗の指示により1729年に設けられた由緒ある溜め池です。一方で万太郎が住んでいる十徳長屋は東京大学にほど近い根津にあり、小合溜井までは実に15キロ近い距離があります」(週刊誌記者)
つまり万太郎は往復で30キロにも及び道のりを、水草採集のために歩いて行ったことになる。小合溜井の最寄り駅はJR常磐線の金町だが、同区間が開通したのは明治29年(1896年)であり、作中の明治15年には影も形もなかったはずだ。
そのため万太郎は倉木と共に、小合溜井に向けて夜明け前から歩きだしていたことになる。おそらくは水戸街道を進み、途中の隅田川は渡し舟を使ったはず。現在の整備された道路なら片道3時間余りの道のりだが、当時はもっと時間がかかったのかもしれない。
「今回の第43回では倉木の妻・えい(成海璃子)が、万太郎はいつ寝ているのかも分からないくらい植物の研究に没頭していると感心していました。どうやら病弱だったのは幼少期だけで、成長してからはすっかり丈夫な身体になっていたようです」(前出・週刊誌記者)
思えば上京前の万太郎も、実家のある土佐の佐川から30キロ近くも離れた高知まで、歩いて往復していた。その道中には疲れた様子も見せずに、道端に生える草花に興味津々だったのである。
上京した現在は、菓子屋・白梅堂の娘である寿恵子(浜辺美波)にぞっこんの万太郎。どうやら体力がつくとともに精力のほうもついていたのかもしれない。