とうとう因縁の2人が顔を合わせてしまった…。
2013年上期のNHK朝ドラ「あまちゃん」第103話が7月31日に再放送され、主人公・天野アキ(のん、当時は能年玲奈)が付き人を務めている女優・鈴鹿ひろ美(薬師丸ひろ子)と、アキの母・春子(小泉今日子)が対面を果たしたのだ。
「鈴鹿のデビューシングル『潮騒のメモリー』は60万枚を売り上げた大ヒットという設定で、音痴だった鈴鹿に代わり声の“影武者”として歌をレコーディングしたのは春子でした。その事実を鈴鹿本人は知らず、2人の初対面の場にいたアキやマネージャーの水口(松田龍平)はヒヤヒヤしながら2人のやり取りを聞くという“針のムシロ”に座らせてしまう形に」(テレビ誌ライター)
春子が「潮騒のメモリー」を歌っていたという事実は、鈴鹿の前で口にすることはご法度だが。
「その禁句のはずの話題に、みずから進んで近寄っていったのは鈴鹿でした。春子の声が素敵だと言い出し、春子が若かりし頃に歌手を目指していたという話題を、鈴鹿のほうから持ち出したのです。『声が似てる気がする』と、鈴鹿から同意を求められたアキの心中を思うと冷や汗が出てきますよね(苦笑)」(前出・テレビ誌ライター)
2人の会話は、やがてアキの「アイドルとしての資質」に移っていく。春子はアキを「この子すごいんですよ、少なくとも私とは全然違う」と評し、続けて「アイドルだったんですよ。どんなに歌がうまくても、お芝居が上手でも、それだけじゃアイドルになれないでしょ?」と語ると、娘には“何か”がある。“何か”が何なのか、自分も知りたいのだと主張したのだ。
「アイドルって偶像だっけ?シンボルとかね。アキはアイドルだったの。小さい田舎のしょうもない町だけど、そこでは間違いなく、アイドルだったんですよ。みんなの期待を一身に背負って出てきたの。だからみんな私に声かけるの、今でも。『アキちゃん元気?どうしてる?』それってアイドルでしょ。そこにいないのに、みんなの心にアキがいるって事でしょ」と、アイドルとは何なのかの核心に迫る言葉を発した春子。
これに対し、鈴鹿は「アイドルの資質、あるかも知れません」と、アキについて認めつつ、「そんな子はゴマンといるんです。原石なんかゴロゴロ転がってるの。その中で、磨いて光るのはたった1個なんです」
このシーンについて、アイドルライターが語る。
「80年代にトップアイドルを極めた小泉今日子と薬師丸ひろ子。2人が語った“アイドル論”にはドラマの役の上とはいえ、緊張感と説得力がありました。何枚ものヒットシングルを出し、グラビアでも活躍した“王道アイドル”の小泉と、抜群の歌唱力でヒット曲を出す一方で映画女優としても人気を誇り、しかも当時はまだ珍しかった大学生活との両立もさせていた薬師丸という、磨き抜かれて“オンリーワン”のトップアイドルに君臨した2人だからこそ、緊迫感の伝わってくるシーンを生み出せたのでは」
さて、そんな2人のやり取りに、割って入るように登場したのが、2人の間にただならぬ緊迫感を生み出した張本人で、アキをクビにし、過去にはアイドル志望だった春子を鈴鹿の声の影武者にした、所属事務所社長・荒巻(古田新太)だった…。3人がどんな修羅場を演じるのか?と興味を引くエンディングは、15分ドラマならではテンポの良さを一層際立たせた。
(石見剣)