これは本当に美味しそう! そう感嘆した視聴者も多かったことだろう。
8月25日放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」第105回では、みえ(宮澤エマ)が営む料理屋の巳佐登にて、実業家の岩崎弥之助(皆川猿時)が「菊尽くし」の宴を楽しむことに。そこに登場した料理が実に見事だったという。
弥之助は前回、大隈重信が菊に凝っていると語り、大隈に進呈する菊を選ぶ会を開くと宣言。最も素晴らしい菊は誰のものであれ500円(現在の数百万円ほど)で買い取るとの大盤振る舞いだ。
その際の料理も菊尽くしにしてほしいとリクエスト。その求めに応じて巳佐登が用意した数々の料理に、視聴者が感心していたという。
「最初の膳にはしんじょ、菊の和え物に加えて、イカ刺しに栗きんとんを載せたと思しき皿を用意。しんじょは菊のつぼみを模しているのでしょう。次に出てきたのは青葉の天ぷらに白い花びらを模した揚げ春雨らしきものを載せ、その頂に小菊をあしらったもの。最後は大皿に真鯛の刺身が菊盛りになっており、艶々とした質感に思わずよだれを垂らした人もいたようです」(テレビ誌ライター)
朝ドラでは料理の出てくるシーンは少なくないものの、これほど美味しそうな皿が並ぶのは圧巻だ。しかもレストランから取り寄せていては見た目の瑞々しさに欠けることから、おそらくはスタジオのそばで調理したものを時間を置かずに撮影したのだろう。
この「らんまん」はあくまで植物学がメインテーマの物語だが、今回の菊尽くしは実に圧巻。それに加え、主人公の万太郎(神木隆之介)らが長屋で口にする握り飯などもいかにも美味しそうだ。
これらの料理はフードコーディネーターの金子奈央氏が手掛けているという。金子氏は放送中の大河ドラマ「どうする家康」の料理も担当しており、いずれも見た目麗しい美味しそうな料理ばかりだ。
そんな素晴らしい料理を目にした視聴者からは絶賛の声に加えて、残念がる声も漏れ伝わっているという。もちろん「らんまん」の料理を残念に思っているわけではなく、別の朝ドラとの比較が理由だというのである。
「2作前の『ちむどんどん』は『らんまん』と同じく、NHK東京放送局が制作。しかもヒロインの暢子(黒島結菜)は料理人を目指して沖縄から上京し、イタリアンレストランで働くなど食がメインテーマの作品でした。それにもかかわらず劇中に登場する料理はことごとく美味しくなさそうで、しかも料理の歴史に反する描写も。イタリア文化の専門家からクレームがつくなど悪評プンプンで、そのあおりを食らったヒロイン役の黒島が気の毒だったほどです」(前出・テレビ誌ライター)
その反省からか、今回の「らんまん」では料理にも相当な力を入れたのではないか。そう訝る視聴者も少なくないという。ともあれ観る者を圧倒するほどの料理を並べてみたところに、NHK東京放送局の本気や意地が示されていたのかもしれない。