なぜ患部ではなく足首なのか。疑問に思った視聴者も多かったようだ。
10月11日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第8回では、ヒロインの鈴子(澤井梨丘)が梅丸少女歌劇団(USK)トップスターの大和礼子(蒼井優)から、帯のような赤い布をもらう場面が。その布の用途に疑問の声があがっているという。
同期生との仲に悩む鈴子。この日も結果的に掃除や洗濯を押し付けられた形になり、帰りが遅くなっていた。すると稽古場で遅くまで自主練している礼子を発見。その姿に刺激され「私も踊ってもよろしいでしょうか?」と、バレエシューズを履こうとしていた。
露わになった鈴子の右足には、親指の付け根に擦り傷が。慣れないバレエシューズを履いての練習により靴擦れしていたようだ。すると礼子は「これを足首に巻いて練習しなさい」と赤い布をプレゼント。自宅に持ち帰った鈴子は自分の足首に布を巻き、ガラス窓を鏡に見立てて自主練したのだった。
「この場面に視聴者は礼子の優しさを感じつつ、なぜ布なのかとの疑問を抱くことに。靴擦れなら絆創膏を渡せばよさそうなところですが、足首に巻くように指示した意味も分からないと、首を傾げる視聴者も少なくないのです」(テレビ誌ライター)
作中では具体的な説明がないため、視聴者の疑問は晴れないまま。まず「なぜ絆創膏ではないのか」という点だが、そもそも作中の昭和2年(1927年)時点で国内には救急絆創膏というものが存在していなかった。救急絆創膏は1921年(大正10年)にアメリカで発売されるも、戦前には日本国内にほとんど入っていなかった。
国内で絆創膏が製造されるようになったのは戦後のことで、昭和23年に日絆薬品工業(現・ニチバン)が「ニチバンOQ絆創膏」を発売したのが最初。それゆえ作中の時代には傷に絆創膏を貼るという発想自体がなかったのである。
「赤い布をなぜ患部ではなく足首に巻いたのか。それは足首をテーピングで固定することにより、安定した姿勢で練習できるからです。靴擦れができるのはバレエシューズに慣れておらず、足が揺れてしまうことで靴に擦れるから。足首を固定して練習すれば上達に役立つのはもちろん靴擦れの防止にもなります」(バレエ経験のある女性誌ライター)
これが現代なら白やベージュのテーピングを足首に施すところだが、そんな便利なテープのなかった昭和初期には、足首に布を巻いて固定するのが一般的だったという。そのような視聴者に分かりづらいところの描写にも、「ブギウギ」の制作陣がしっかりと時代考証していることが示されているようだ。