12月5日、ロックバンド・The Birthdayでボーカル&ギターを務めるチバユウスケさんが11月26日に死去していたことが報じられた。55歳だった。
チバさんは1996年に「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」 (ミッシェル・ガン・エレファント)=以下、ミッシェル=でメジャーデビュー。同バンドは解散直前の2003年6月には、「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)で、歌唱出番をドタキャンしたロシアのアーテイスト・t.A.T.u.の代わりに、生放送で予定になかった楽曲を演奏して番組を救ったことでも知られる。ミッシェルの解散後もチバさんはいくつものバンドを結成。その一つである、The Birthdayは、昨年12月公開の映画「THE FIRST SLUM DUNK」でオープニング主題歌「LOVE ROCKETS」を担当。楽曲はスマッシュヒットし、世代を超えて広く愛されていた。交流のあった音楽誌編集者が語る。
「今年4月に食道がんであることを公表し、その後は治療に専念していました。いわゆる売れ線の音楽を作るわけではなく、自身の美学に則った表現をする、唯一無二のロックミュージシャンでした」
ただし、最後のバンドであるThe Birthdayで、「ロックを追求する孤高のアーティスト」として知られるチバさんの相棒を務めたのが、硬派なロック路線のミッシェルやThe Birthdayとは対極にある、ミリオンヒットを連発した有名アーティストだったことは、ファン以外にはあまり知られていない。前出の音楽誌編集者が解説する。
「それは、90年代に活躍した男女ユニット・MY LITTLE LOVER(以下、マイラバ)のギタリスト、藤井謙二です。180万枚を売り上げた大ヒット曲『Hello,Again~昔からある場所~』を、音楽プロデューサー・小林武史と共同作曲を手掛けた人物でもあります。藤井はマイラバを02年に脱退後、セッションミュージシャンとして様々なアーティストのサポートで活躍。The Birthdayには2代目ギタリストとして11年に加入、名前の表記をフジイケンジと改めていました」
90年代に隆盛を極めた超売れ線J-POPアーティストの意外な転身先が、チバさんが率いたゴリゴリのロックバンドだったというわけだ。
「フジイの加入後、The Birthdayの楽曲は持ち前のロック色に加えていい意味でのポップさが見られるようになり、代表曲と呼ばれるような曲が何曲も生まれました。ファンにも『フジケン』の愛称で親しまれ、チバさんが病魔を克服した暁には、再びライブで復活したThe Birthdayを見せてくれると信じていたのですが…」(前出・音楽誌編集者)
だが、結局それは叶うことはなく、The Birthdayは解散こそしないもののこのまま活動休止に入ることが発表された。食道がんの大敵である酒とタバコをこよなく愛したチバさん。今はただ、突然の訃報が無念でならない。