その発言はどうやら、二重におかしかったようだ。
1月24日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第79回では、村山興業の御曹司・愛助(水上恒司)が病気療養のため大阪に戻ることに。その帰り道で箱根に寄り、芦ノ湖の湖畔にある「ごっついええ宿」に一緒に泊まることを、恋人でヒロインのスズ子(趣里)に提案する場面があった。
愛助によると、大学生になるまでは毎年、夏と正月にはその宿に泊まっていたという。正月には駅伝を見ていたそうで「ホンマにええとこやん」と説明していた。
正月の駅伝と言えばやはり、箱根駅伝(東京箱根間往復大学駅伝競走)のことだろう。同駅伝は大正9年に初開催されており、大正12年生まれの愛助が中学生のころにはすでにおなじみの大会となっていた。
「愛助の言葉に視聴者からも《本当にボンボンだ》《5区を見ていたのか》といった声が続出。現在は日本テレビが独占生中継していることから《他局の番組なのに》という感想もあがっていました。ただ一方では、愛助の発言には不自然なところがあるとの指摘もあったのです」(テレビ誌ライター)
そもそも吉本興業をモデルとし、大阪に本社がある村山興業の経営者家族が、夏や正月を遠く離れた箱根で過ごすものだろうか。これには視聴者からも<南紀白浜とかじゃないの?>といった疑問が呈されていた。
それに加えて、仮に正月を箱根で過ごしていたとしても、愛助が箱根駅伝を見ていたというのは史実に反するというのである。それは箱根駅伝の歴史を見れば明らかだという。
「今でこそ『正月の風物詩』となっている箱根駅伝ですが、開催日が1月2日と3日になったのは昭和30年からのこと。それ以前は1月最初の土日に開催されることが多く、愛助が早稲田大学に入学する直前の昭和12年は1月9日と10日の開催でした。もはや正月と言える時期ではなく、愛助が正月休みに箱根駅伝を見ていたというのは史実に反するのです」(前出・テレビ誌ライター)
どうやら制作側は箱根駅伝が昔から、1月2日と3日に開催されていたと勘違いしていたのではないか。ひょんなところに、時代考証の甘さが見え隠れしていたようだ。