2015年5月、ある低予算映画が公開された。元俳優で故・今井雅之さんが遺した脚本を基にした「手をつないでかえろうよ~シャングリラの向こうで~」である。初公開は、今井さんの命日にあたる5月28日。
同作は、今井さんがライフワークとし、原作・脚本・演出を務めた舞台「THE WINDS OF GOD-KAMIKAZE-」をベースにしたもので、初の映画化。親友で、演劇版の関係者でもあった奈良橋陽子さんが、引き続き監督を務めた。映像会社に勤めるアートディレクターはいう。
「障がいを持った男性がある女性に惹かれ、やがて結婚。ところが男性はある罪を犯してしまい、ひとり旅に出た先で新たな女性と出会い‥‥という内容です。なんとSMAPの中居正広が友情出演しました。ほぼノーギャラだったそうです」
中居と今井は、中居の初主演ドラマ「味いちもんめ」(テレビ朝日系)で共演して以来の大親友。今井さんが大腸がんに罹患した際、芸能人でいちばん最初に病気の事実を打ちあけたのが中居だった。
「中居が撮影現場に入って驚いたのは、キャストとスタッフの全員が、今井さんの仲間だったこと。フリーター、役者のタマゴなど。ほとんどが映画制作に携わるのが初めて。さながら、学園祭の自主映画だったとか」(前出・アートディレクター)
そんななか、中居にとってはうれしい再会もあった。ほぼ無償にもかかわらず、プロデューサーを買って出たNさんは、中居が1991年に出演したドラマ「学校へ行こう!」(フジテレビ系)のスタッフ。旧友とおよそ四半世紀ぶりに会えたのは、亡くなった今井が繋いだ縁だった。さぞかし、中居の心中は複雑だったに違いない。出演するドラマの内容、役柄、ラブシーンの有無に慎重を期す中居だが、大好きな今井の遺作ということで、即決でOK。0円出演にいっさいの躊躇がなかったのは、さすが“漢・中居”である。
(北村ともこ)