あまりにも安直な配役とはいえ、視聴者はつかの間の安心感を抱いていたようだ。
3月13日放送のNHK連続テレビ小説「ブギウギ」第114回では、ヒロインのスズ子(趣里)が脅迫電話を受けることに。娘・愛子の誘拐をほのめかすもので、愛子を溺愛するスズ子は大パニックに陥っていた。
近所を探し回るも、愛子の姿は見つからず。ついには家政婦・大野(木野花)の助言を受け入れ、警察を呼んだのであった。
「スズ子のもとを訪れた高橋刑事を演じるのは、刑事ドラマ『警視庁・捜査一課長』シリーズ(テレビ朝日系)でおなじみの内藤剛志。刑事という記号そのものが登場したも同然で、荒唐無稽なドタバタ話にがぜんリアリティが生まれたのです」(テレビ誌ライター)
それまでは安っぽいホームドラマだったのが突然、プライムタイムの本格派刑事ドラマに変わったかのような展開に、視聴者は驚きつつも没入。趣里の大げさすぎる演技は相変わらず鼻につくものの、内藤の「ザ・刑事」と言える演技は見ごたえがあったと言えよう。
だが一方では、当の誘拐未遂犯が実は、近所に住む無職男性であることも判明。しかもその息子は愛子の誕生パーティーに来たことがあり、今回たまたま愛子と仲良くなるという、あまりにも都合の良すぎる展開はいつものブギウギクォリティだったのである。
趣里の演技うんぬん以前の問題として、本作では不出来な脚本や、ドタバタ活劇風の演出が視聴者の不興を買っている。今回の誘拐劇も、スズ子のモデルである笠置シヅ子が実際に遭遇した事件を下敷きにしているものの、ふたを開けてみたら安っぽい母娘の確執を描くための道具とされている始末だ。
「SNS上では《内藤剛志の無駄遣い!》といった批判も渦巻いていますが、実のところ内藤の登場が今回の物語を救ったと言えるでしょう。これが内藤以外の演者であれば、ひたすらスズ子のドタバタばかりが目立つ結果になったはず。一部には趣里が救われたとの声もあるものの、彼女はあくまで制作陣のつたない演出に真摯に応えているだけ。本当に救われたのは、ろくでもない筋書きと演出をカバーしてもらった制作陣に違いありません」(前出・テレビ誌ライター)
救世主となった内藤の出番は今回と次回の2話のみになりそう。朝ドラならではの贅沢な配役も、オーバークォリティであることは確実なようだ。