MLB、そして日本全体を揺るがしている水原通訳のスポーツ賭博問題。ドジャースでは問題が表面化した時点で水原通訳を解雇し、MLB開幕戦ソウルシリーズの第2戦に、彼の姿はなかった。
はたして水原通訳はどんな法律違反に手を染めてしまったのだろうか。状況を理解するにはまず、アメリカにおける「スポーツベッティング(賭博)」について知る必要があるだろう。
カジノの街として知られるラスベガスをはじめ、アメリカでは様々なカジノで各種スポーツの結果などを対象にしたスポーツベッティングを楽しむことができる。その内容は勝敗予想のほか、プレーオフ進出チームや優勝チームを予想するといった長期的な賭けも人気だ。
MLBではルールにより選手や審判、球団関係者や被雇用者(employee:ここに水原通訳も含まれる)がMLBを対象とした賭けに関わることを禁止している。昨年にはこの禁止条項がさらに厳格化され、勝敗予想はもちろん「ホームラン競争」などを含むあらゆる方式での賭けに参加することが厳禁となった。
一方では、他のスポーツに賭けることは禁止されておらず、アメフトのNFLやカレッジフットボール、バスケットボールのNBA、アイスホッケーのNHLなどを対象としたスポーツベッティングへの参加はルール違反とはならないのである。
実際、水原通訳も「MLBには賭けていない」ことを認めている。それゆえMLBのルールには抵触していないはずだが、何が問題だというのか。
「一つ目の問題は、カリフォルニア州が未だにスポーツベッティングを禁じている州であること(※スポーツベッティングが禁止されている州:アラバマ、アラスカ、カリフォルニア、ジョージア、ハワイ、アイダホ、ミネソタ、ミズーリ、オクラホマ、サウスカロライナ、テキサス、ユタ)。たとえば州民がラスベガスに旅行し、そこでスポーツベッティングを行うことは可能ですが、カリフォルニア州の自宅からオンラインのスポーツベッティングに参加することは違法となります」(アメリカ在住歴のあるライター)
近年は「ドラフトキング」などのオンライン業者が人気を高めており、それこそ2月のスーパーボウルではテレビCMを打っていたほど。しかしカリフォルニア州民の水原氏がドラフトキングで遊ぶこともまた、違法となるのである。
ちなみにカリフォルニア州では2022年、スポーツベッティングを合法化する法案が住民投票で否決。次に同様の法案を上程できるのは26年で、まだしばらくは合法化されないわけだ。
一方でアメリカ全体ではスポーツベッティングの人気がますます上がっており、2月のスーパーボウルでは13億ドル(約1970億円)が合法のスポーツベッティングに賭けられたという。日本国内では1996年の有馬記念が記録した約875億円が1レースの売上最高額となっており、その2倍超という途方もない金額だ。
ともあれ、自身がギャンブル中毒だと告白していた水原通訳は、カリフォルニア州内では違法となるスポーツベッティングを楽しむため、認可を受けていない違法な手段を使うよりなかったのかもしれない。
しかも水原通訳の告白からは、もう一つの違法要素も浮き彫りになったというのである。
「水原通訳は負けが込んだことで、借金の450万ドル(約6.8億円)を大谷選手の口座から送金したと伝わっています。しかし合法のスポーツベッティングはすべて前金制であり、あとから取り立てられることはありません。すなわち彼が利用していた違法スポーツベッティングは、後払いが可能だったようです」(週刊誌記者)
日本国内でも競馬などを対象とした違法賭博では、掛け金を後払いで集金することがある。掛け金がなくても遊べるとあって、ギャンブル中毒者には絶好の手段となってしまうわけだ。
水原通訳が取り引きしていたという人物は昨年10月、違法賭博の容疑でFBIが自宅を急襲していた。そこから捜査が続いた果てに大谷選手の送金記録が発見され、そこから水原通訳に繋がった形だ。彼はなぜ、そんな違法業者と繋がってしまったのか。その真相が明らかになる時は来るのだろうか。