ドジャース・大谷翔平が巻き込まれている元通訳・水原一平氏の違法賭博関与と、お笑いコンビ・ダウンタウンの松本人志による性加害疑惑などのスキャンダルを受け、社会学者・古市憲寿氏は、ケースごとに世論の風当たりに偏りがある点を疑問視している。
ギャンブル依存症であることを告白した水原氏は、違法賭博によって積み重なった借金を返済すべく、大谷の口座からお金を盗んで胴元へ送金していたとの疑惑が浮上しており、大谷も3月26日に声明を発表。当初、一部では大谷にも違法賭博に関与した疑いや、違法と知りながら水原氏の借金を肩代わりした説が出ていたが、本人はそれを否定し、水谷氏がそのようなギャンブルに手を染めていたことは全く知らなかったと話している。
一方、週刊文春に一般女性への性加害疑惑を報じられた松本もまた、自身のXから「事実無根」だと主張し、文春を発行する文藝春秋と週刊文春編集長を提訴。3月25日のXでは「自分の主張はかき消され受け入れられない不条理に、ただただ困惑し、悔しく悲しいです」などと綴っていた。
大谷も松本も、それぞれの疑惑を否定し、“無罪”であることを主張しているが、古市氏には納得がいかない点があるようだ。
さる3月30日に放送された「ワイドナショー」(フジテレビ系)。出演した古市氏は、「何か大谷さんの潔白って、みんなすぐに信じるんだなって思ったんですよ」「推定無罪って、本来はあらゆる事件でそう向き合うべきだと思うんですよ。松本さんの件しかり、あらゆる犯罪に対しても、本当はこの容疑者とされる人はやってないんじゃないかっていう。あくまで容疑者だから」と、疑惑の段階であることを認識する必要があると語る。
さらに続けて、現状では「我々はそうは思わなくて、“絶対にこいつが犯人だろう”と思ってニュースとか見ちゃうじゃないですか。でも、大谷だけは例外なんだなぁと。大谷選手のことはみんな、なぜか絶対にシロだっていうふうに信じてる」と指摘し、「でも、本当は一次情報がないっていう点では同じじゃないですか」と、大谷のケースでも決定的な情報が足りていない状況だと話している。
「確かに“疑わしきは罰せず”という推定無罪は法治国家の大原則。司法の場では当然守られるべきものですが、古市氏は、推定無罪だから松本についても、もっとシロだという論調になるべきだと言っているだけのように聞こえます。さらに言えば、過去に『ワイドナショー』で共演するなど、大谷に比べて身近な関係だからこそ擁護したいという気持ちもあるように思えますね。しかし、松本と大谷がそれぞれ一次情報がないのに、擁護する人が多いのは松本より大谷のほうだという現象があるとするなら、それは推定無罪の原則とは別に、著名人ごとに世間が抱くイメージが違うという問題にすぎません。現実として、大谷には学生時代から野球以外の娯楽には目もくれず、ひたむきにトレーニングを続けた結果として現在のメジャートップクラスという実績があり、一方の松本にはその言動に賛否が分かれるだけの要因がありますからね。自身が身を置く世界の頂点に立ち、日々その才能を磨き続けた点では大谷と同じですが、松本は、過去のバラエティ番組で共演した女性タレントにセクハラに該当するような発言をするなど、物議を醸す言動が少なくなかったのも事実。よって、司法がそれに左右されることはなくとも、有名人のスキャンダルごとに世間が抱くイメージとしての疑惑にグラデーションが生じることは不可避だし、それを推定無罪と結びつけるのは違和感を覚えますね」(テレビ誌ライター)
双方ともに法的な「真相究明」はいずれ裁判で明らかにされるのだろう。が、それと世間が抱くイメージの問題は常に別なはずだ。
(木村慎吾)