日暮里・舎人ライナーは東京都荒川区の日暮里駅から足立区舎人地区の見沼代親水公園駅を結ぶ列車だ。お台場の“ゆりかもめ”と同じ新交通システムが導入され、コンピュータ制御による無人での自動運転を行っている。
通常は運転室となる先頭車両の最前部にも座席があり、鉄道ファンや子供たちですぐに埋まる。この日も親子連れが陣取り、大喜びしていた。車両はゴムタイヤのため振動が少なく、高架を走るので眺めもいい。
見沼代親水公園駅に着いたら、東口を出て駅を見上げる。駅の先で高架がスパッと切断したように終わっている。まさに終着駅という光景がツボにはまり、大笑いしてしまった。
少し歩くと右側に見沼代親水公園の入口がある。江戸期の農業用水・見沼代用水を整備した公園で、約1.7キロの親水路がある。サクラ、ケヤキ、シラカシ、サルスベリなどの樹木が植えられ、石橋や飛び石、東屋などもあり、目まぐるしく風景が変わって楽しい。
児童公園内に神社を見つけ、寄り道をしてみる。舎人諏訪神社といい、覆屋に守られた社殿は江戸末期の建築という。
社殿の彫刻を見ていると地元のおばあさんから「お宮さんが好きなのね。毛長神社には行った?」と声をかけられた。毛長神社は公園の東側を流れる毛長川の東岸(埼玉県草加市新里地区)にあるそうで、悲しい昔話を聞かせてくれた。
新里村には“毛長姫”と呼ばれる長髪の娘がおり、川を挟んだ舎人村の青年と恋仲になった。ところが、娘は川に飲まれて死んでしまう。後日、川から娘のものと思しき長髪が見つかり、毛長川の名が付いた。
その髪を御神体にして毛長姫を祀ったのが毛長神社の始まりで、男神である舎人諏訪神社の社殿を毛長神社に向けて建て、二人を偲んだそうだ。
見沼代親水公園を通り抜け、少し先の「はんの木橋交差点」から保木間堀親水水路に入る。途中、毛長神社に寄り親水路を進むと、ほどなく伊興(いこう)遺跡公園に着いた。
このあたりには古墳期に最も栄えた集落があり、その頃の祭祀遺物が大量に出土している。恐らく水上交易の拠点となり、水上安全の祈願などが盛んに行われたのだろう。
園内の展示館では、祭祀の様子を再現した原寸大模型や出土品などが無料で見学できる。屋外に復元された竪穴式住居、古墳の原型とされる方形周溝墓を見て、東武スカイツリーライン竹ノ塚駅へ向かった。
内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。