11月23日に安達祐実主演ドラマ「3000万」(NHK)が終わってしまった。10月5日放送の第1話で心をつかまれてからこれまで、土曜の夜10時には必ずテレビの前で体育座りをして、安達祐実演じる祐子のイライラに共感し、青木崇高演じる義光のお気楽さにツッコミを入れながら、このドラマにどっぷりとハマっていた。
「我慢しない生活がしたい」と望む祐子(安達)、義光(青木)、子どもの純一(味元燿大)は、第1話でバイクと衝突すれすれの事故を起こしてしまう。
するとバイクを運転していた女性(森田想)は、純一が乗ったままの車に乗り込んで逃走。その後、女性は事故を起こして重体に。純一にケガはなかったが、女性が持っていた現金3000万円が入った黒いバッグを持ってきてしまったことからドラマはスタート。
祐子は通販サイトの派遣社員として電話オペレーターをする主婦から、驚く速さで犯罪に手を染めていくのだ。正当防衛とはいえ、襲いかかってきた男をフライパンで叩いて湖に落として放置したり、特殊詐欺グループの「かけ子」となって成績をあげて報奨金をもらったり、祐子が道を踏み外していくドラマを見ながら、誰もが簡単に道を踏み外せる現実を逆に痛感。心がヒリヒリした。
最終回では清水美砂演じる「ただのおばさんにしか見えない」特殊詐欺グループのボス・穂波悦子の恐ろしさにも心がヒリついた。悦子(清水)が「私はただのおばさんよ」などと言いながら、平気で祐子とソラ=山崎美姫=バイクを運転していた女性のことを殺害しようとする様子から、現実の特殊詐欺グループのボスも、こういう「ただのおばさん」かもしれないと考えさせられた。それほど清水演じる悦子の説得力はあっぱれだった。
ラストシーンで誰もいない道を車で走る祐子は、赤信号が青に変わるまできちんと待っていた。第5話だったか、通販サイトで祐子の同僚だった舞ちゃん(工藤遥)が、「誰もいない赤信号で止まりますか?」といった話をしていたが、祐子は車を停めたまま2回も赤信号を待っていた。そしてやっと青信号で車を発車させたかと思うと突然Uターン。来た道を戻っていくのだ。このシーンでドラマは終わったが、おそらく祐子はこれまでのことを自首しに警察へと向かったと思う。
「結末は視聴者にお任せ」パターンは不満を感じることが少なくない。しかしこの「3000万」に限っては例外だろう。安達、青木、清水の演技力の素晴らしさもさることながら、特殊詐欺グループの指示役をしていた坂本こと本名・望月幹生を演じた木原勝利も、これからどんどんドラマの仕事が増えるだろうから注目していたい。
(津島修子)