肉というと、日本においてポピュラーなのは、牛、豚、鶏の3種類ですね。みなさんはどれがいちばんお好きですか?
僕の個人的スタンスとしましては、「いちばんうまいのは牛肉。いちばんよく食べるのは鶏肉。いちばん好きなのは豚肉」となります。かなり極論ですけどね。
でも、やっぱりごくたま~に食べる、きめ細かいサシの入ったA5和牛あたりのおいしさって、ちょっと度を超えているじゃないですか。ところが、毎日食べたいかと聞かれればそこまでではない。胸焼けしちゃうし、本当に、年に数回でいい。では日々食べまくっている肉はと言うと、鶏肉になるのかな。ももは当然、手羽元、手羽中、手羽先あたりはどう調理したってうまい。むねやささみのあっさり感と、工夫次第でしっとりやわらかく仕上げられる楽しさもいい。なんこつにぼんじりにレバーにと、どれもスーパーで買ってきて、適当に焼いて好きに味つけるだけで、最高にいい酒のつまみになります。ただ、やっぱり最愛の肉は脂身多めの豚ばら肉なんだよな~。あの独特の香りと甘みと、こってり感。もしかして僕、前世で豚ばらと夫婦だったのかもしれません。
と、ここまでは晩酌の話ですね。当然、焼肉屋さん、やきとん屋さんに、とんかつ屋さん、焼鳥屋さんなど、好きな店はいくらでもあります。幸せですよね、本能のままに肉をほおばりながらビールやホッピーやチューハイなどをぐびぐびやる時間って。ただ、特に好きなお店ってどこだろうな~?と思い返そうとしても、ありすぎて絞りきれない。そこで、ふと頭に浮かんだお店があります。それは、町田の名店「柿島屋」。
ここはですね、今まで出てこなかった「馬肉」料理専門の老舗酒場なんです。とはいえ、入るのに緊張するようなお店ではありません。大きなフロアに長机がずらっと並び、その周囲には小上がりの座敷もあって、土日祝日ならば12時から、平日ならば午後4時から、リーズナブルな馬肉料理をつまみに、酒飲みの先輩がたが幸せそうに焼酎の梅割りあたりをすすっているような、ごく大衆的なお店なんです。
いいですよ~。「馬刺し」はもちろん、「メンチ」に、煮込みっぽい「肉皿」に、「ハム」「チョリソー」「肉ぬた」などなど、とにかくぜ~んぶ、馬肉! まさに、馬に溺れる酒場。
特に外せないのが「肉なべ」で、「並」が1450円、「上」が1850円。たっぷりの馬肉と豆腐、野菜、きのこなどが入った、みそベースのすき焼き鍋。その中に馬の脂身がぽとりと落としてあるんですが、あれからまたいい~旨味が出るんだよな~‥‥。
で、最後のお楽しみが、シメの「そば玉」(330円)。ちょっとゆでおきっぽいようなボソボソ感のある独特の麺なんですが、これが馬肉をはじめとした素材の旨味が出まくったスープをよ~く吸って、たまらなくおいしいんですよね。まさに、柿島屋でしか食べられない味。あ~、書いてたらもうたまらなくなってきたぞ。
そういえばしばらく前、町田からも近い相模大野にある「実家」という酒場に、店名と外観が気になったという理由でふらっと入ってみたんです。するとここが、猪や鹿などのジビエをメインに扱うお店で、これまたリーズナブルな絶品料理だらけ。特に、炙りたてでじゅわじゅわと脂があふれる、猪の「手作り自家製ジャーキー」(600円)は、思い出してもよだれが出てくるほどのおいしさだったな~…。
あれ、そういえばここまで、羊の話が出てないぞ!? というわけで、肉と酒の世界もまた広大。ちょっと聞いてみたいのですが、ナオさんは「珍しい肉を食べた思い出」ってありますかね?
パリッコ:酒場ライター。著書に「酒場っ子」「天国酒場」など多数。スズキナオ氏との酒飲みユニット「酒の穴」としても活動している。「缶チューハイとベビーカー」が絶賛発売中!