前々から気になっていた駅がある。東京都の秋葉原と茨城県のつくば市を結ぶつくばエクスプレスの流山おおたかの森駅だ。
おおたかは鳥類のオオタカのこと。名前から大きな姿が思い浮かぶが、成鳥でもカラスくらいの大きさで羽の色が灰青色であることから“蒼鷹”と呼ばれ、転じてオオタカになった。
駅名の由来は、オオタカが営巣する広大な森があったからだ。平成期まで森は約50ヘクタールもあった。ところが、鉄道の開通にともなう沿線の宅地開発により、森は3㌶を残して伐採する計画が立つ。それを知った市民は行政と交渉を重ね、約25ヘクタールの森が生態系を保全する都市公園・市野谷の森として残された。
今年はつくばエクスプレス開通20周年でもあり、見物に来たしだいだ。まずは流山おおたかの森駅前観光情報センターで情報収集。オオタカの存在を聞くと「近年もオオタカの営巣が確認されています」と返答があり、ホッとした。
市野谷の森は基本立入禁止だが、昨年3月に開園した市野谷の森東近隣公園には遊歩道があるという。さっそく訪ねると雑木林の中に落ち葉の積もる遊歩道が続いていて、野鳥のさえずりも聞こえた。
森の外周を歩き、三輪茂侶(みわもろ)神社へ。この日(1月8日)は偶然にも“ヂンガラ餅行事”の開催日で、今まさに始まるところだった。
神前に8升の御神酒と8升の鏡餅(上3升・下5升)、野菜や果物など8種類の供物を供え、儀式後に地域の人々で餅を奪い合い、その割れ方で1年の吉凶を占う。コロナ禍前は男衆が大勢集まったが、当日は法被姿の氏子10名ほどで行われた。揉み合うことしばし。最後は柱に当てて餅を割り、神職が「今年も豊作です」と宣言して終了した。
氏子の1人に労いの言葉をかけると「いやいや。昔は1時間近く奪い合ったので固い餅も温まり引きちぎれたそうです。また盛大にやりたいね」と笑った。
最後は“駒木のおすわさま蒼鷹”こと諏訪神社にひと足伸ばす。1200年以上の歴史を持ち、平安期の武将・源義家が後三年の役の際に戦勝祈願したと伝わる。
1万坪の境内は鎮守の杜に覆われ、2つの鳥居、随神門、神門をくぐった先に御祭神の健御名方富命を祀る本殿や拝殿、摂社などがある。ひと際、目を引く大杉の根元には御神水が湧き出ていた。古くから万病に効く霊水といわれ、今も持ち帰る人が多いのか、専用容器が用意されていた。
内田晃(うちだ・あきら):自転車での日本一周を機に旅行記者を志す。街道、古道、巡礼道、路地裏など〝歩き取材〟を得意とする。