Q:3歳5カ月の女の子のママです。無分別に娘を叩いたりはしませんが、辛く当たってしまったり、ぐちぐちといつまでも叱ったりしてしまいます。先日も普段から牛乳を飲まない子なのに、急に飲みたいと言い出しました。そのとき「飲めなかったら許さないよ」と、トゲのある言い方をしてしまいました。アレルギーがあるわけではないので、好き嫌いが少なくなるのはいいことなのに、どうしてか優しく接することができません。
A:“暴力をふるわなければ、ちゃんとごはんを食べさせていれば虐待じゃない”、と思っている保護者は多いようですが、それは間違いです。子供の話を無視する、なじるという行為は、ネグレクト(精神的虐待)という虐待行為にあたります。冷たくされたり、長々と言葉で怒られるのは、子供にとって、叩かれるよりも辛い状況です。このお母さんは、子育て以外のストレスをうまく発散できないことをうすうす感じていて、自分でも焦って質問をしてきたのではないでしょうか。
娘さんの心理状態を推察すると、「ママはどうしていつも怒っているのかな? わたしのこと嫌いなのかな? ママを喜ばせようとして『牛乳飲んでみる』って言ったのに、どうして怒るんだろう?」ということだと思います。
お子さんに特に問題がないのに、優しく接することができないのは、育児ではなく普段の生活でなにかストレスを抱えているのではないでしょうか。パートナーや同居している人。もしくは交友関係などで問題を抱えていませんか。それらの溜め込んだストレスを、子供にぶつけているのではないでしょうか。
できれば、赤ちゃんのころに戻って育児のやり直しをしてほしいくらい、娘さんは傷ついています。
もしもこのお母さんに、ネグレクトを止め、育児をやり直す気があるのなら、まずは自分のストレスを把握することが第一です。ストレスを取り除くのではなく、何が自分のストレスなのかを見極めること。自分を知ることが、育児よりも必要なことです。
また、育児をする上で、子供のやる気を引き出すポイントは、“褒めて達成感を味わわせる”ことです。このケースで言えば、今まで飲めなかった牛乳を飲んでみたいと言ったことを、まずは褒めてあげましょう。小さなスプーン1杯からからでもいいんです。それを口にして飲むことができたら、「飲めたね!」と褒めてあげる。コップ一杯を全部飲めなくてもかまわないのです。子供は“飲めた”という達成感と褒められた喜びを感じ、徐々にですが確実に苦手を克服していけます。
(監修・ストレスケア日比谷クリニック 酒井和夫院長/取材・文 李京榮)